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読書備忘録です。

名誉と恍惚/松浦寿輝

日中戦争/上海事変下の上海を舞台とする謀略ものロマン。映画「ラスト、コーション」「上海の伯爵夫人」とかカズオ・イシグロ「わたしたちが孤児だった頃」とか、他にもっと本書に近い雰囲気を持つ小説もあったと思うのだが(思い出せない)、魔都上海が舞台というだけでワクワクする。スリリングな展開と江戸川乱歩的な妖しさ・エロス、上海の街や映画、撞球などのディテールの素晴らしさ、まさに巻を措く能わず。

私にとっての小説オールタイムベスト10に入りそう。

 

名誉と恍惚

名誉と恍惚

 

 

 

とめられなかった戦争/加藤陽子

テレビ番組がもとになってるからか、スカスカ感がある。

戦争被害受忍論批判や開拓団のエピソードは、唐突に出てきて違和感。

 

とめられなかった戦争 (文春文庫)

とめられなかった戦争 (文春文庫)

 

 

 

シビリアンの戦争/三浦瑠麗

軍が消極的であるにもかかわらず、シビリアンにより攻撃的戦争が引き起こされる。その要因として、シビリアンと軍人とが分断されていることが挙げられる(犠牲を強いられる兵士と平穏に暮らせる市民の間の意識ギャップ)。このため、その解決策としてあげられるのが、デモクラシーを、政策決定に対する自由な参加とともに、その結果を安全保障コストなども含め応分に負担するような国家=「共和国」に近づけること。これは、徴兵制度、予備役兵制度の拡充などにより、軍の経験や価値観を多くの国民が共有、体験することを意味する。

趣旨は理解できるものの、ハードルが高いというか、筋が悪すぎるというか。むしろ、氏の言う「政治がシビリアンコントロールの確保とは別に軍(及びプロフェッショナルな文民官僚)の専門的助言を聞き入れること」を制度化することが重要ではないか。

プロフェッショナリズムの発展が政治主導の戦争を抑制するという指摘はそのとおりで、デモクラシーのエリートとの関係という論点に発展するのかもしれない。

 

シビリアンの戦争――デモクラシーが攻撃的になるとき

シビリアンの戦争――デモクラシーが攻撃的になるとき