HONMEMO

読書備忘録です。

こわいもの知らずの病理学講義/仲野徹

学術的内容を、一定の水準を維持しながらやさしく説明するのは難しいこと。本書は、もっとくだけた内容を想像していたが、なかなかに真面目な本で、勉強になりました。 こわいもの知らずの病理学講義 作者: 仲野徹 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2017/09/…

死に山/ドニー・アイカー

60年前、冬のソ連ウラル山脈での若者9人の遭難事故。遭難者たちは、靴を履かず、衣服もろくに着けず、重傷を負ったものや舌がなくなっている者もあり、衣服からは放射線が検出された。ソ連時代という背景などもあって、謎の提示は圧倒的なのだが、ノンフィク…

平成精神史/片山杜秀

-平成は、災害や北朝鮮というリアルに対応不可能な事象に対して思考停止し、現実逃避、刹那主義に陥るニヒリズムが蔓延した時代。しかも、諦めてやりすごして何とかなるとう楽天的虚無主義。これは、永続するものという皇国イデオロギーにも関係している。し…

歌仙はすごい/辻原登・永田和宏・長谷川櫂

あられもないタイトルだが、 「歌仙はすごい」はすごい なんという豊かな「座」であることか。 歌仙は、この国の文芸の一つの極み。 歌仙はすごい-言葉がひらく「座」の世界 (中公新書) 作者: 辻原登,永田和宏,長谷川櫂 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売…

小泉信三/小川原正道

小泉信三は、小熊英二のいう「オールド・リベラリスト」(大正期に青年時代を送り、共産主義を嫌悪し天皇を敬愛する自由主義者。都市中産階級以上の出身で、一般民衆から隔絶している。軍国主義は突発的異常事態であり、それ故正常な大正に帰ればよい)ではあ…

ふたつのオリンピック/ロバート・ホワイティング

ライター&ジャーナリストの名刺を持つ著者が、1962年、米軍諜報部員として来日して以来、今日に至るまでの自伝的ノンフィクション。 タイトルはいわば象徴的なもので、オリンピックに重点はなく、半世紀以上にわたる日米の政治・社会、裏社会、スポーツ、ジ…

考える日本史/本郷和人

-戦国時代の同盟は全く守られなかった。他国の人間は信用できなかった。→秀吉以前の中世に日本という国家はなかったのではないか? -日本では、諸外国で見られたような大虐殺が見られない(信長除く)。穏やかで変化を好まない日本の背景には、多神教や世襲原…

あらためて教養とは/村上陽一郎

共感する点が多々ある。 こういう論旨に対しては、マンガを人前で読んで何を恥じなければならないというのか、老害のたわごとだ、みたいな(無教養な)反応が多いのではないだろうか。万人が教養ある人ではあり得ず、そういう人は今も昔も限られるのだろうが、…

崩れる政治を立て直す/牧原出

作動学。大事な視点だと思うが、具体的なあてはめが分かりにくいところがある。 崩れる政治を立て直す 21世紀の日本行政改革論 (講談社現代新書) 作者: 牧原出 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/09/19 メディア: 新書 この商品を含むブログ (2件) を見る

魂に息づく科学/リチャード・ドーキンス

サブタイトルは、ドーキンスの反ポピュリズム宣言とされているが、直訳すれば、情熱的合理主義者ドーキンス選集であり、雑文集。 ドーキンスの徹底した合理主義は、宗教に対する激しい攻撃はもとより、ブレグジットを生んだポピュリズム、疑似科学や一部のサ…

広重TOKYO/小池満紀子、池田芙美

A5サイズの比較的大きな、美しい図版で名所江戸百景が採録されているが、それでも、丁寧に解説されている雲母摺、空摺、布目摺、きめ出し、あてなぼかしといった技法は、はっきりとはわからない。 広重TOKYO 名所江戸百景 作者: 小池満紀子,池田芙美 出版社/…

幸福の増税論/井手英策

筆者は、2020年までの期間限定で政治をやるとして、旧民進党(前原誠司?)のブレーンとして活動もしているようだ。 本書の構想は興味深いのだが、日本人・社会の思考回路、心理構造を根底からひっくり返して、本書でいう頼りあえる社会を実現する道筋はなかな…

想像ラジオ/いとうせいこう

死者とともに生きるということ。 想像ラジオ (河出文庫) 作者: いとうせいこう 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2015/02/06 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (20件) を見る

日本画とは何だったのか/古田亮

もう少し日本画に造詣が深いとより興味深く読めるのだろうが。 図版も結構多くて良いが、こういう本には索引が欲しい。 日本画とは何だったのか 近代日本画史論 (角川選書) 作者: 古田亮 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/01/26 メディア: 単行本 こ…

アドラー心理学入門/岸見一郎

アドラー心理学をもとにした処世術指南本といった趣 アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書) 作者: 岸見一郎 出版社/メーカー: ベストセラーズ 発売日: 1999/09/01 メディア: 新書 購入: 12人 クリック: 100回 この商品を含むブログ (31…

戦禍のアフガニスタンを犬と歩く/ローリー・スチュワート

2002年初頭、休暇中のイギリス外交官が、タリバン政権崩壊直後の冬のアフガニスタン中部山岳地帯をヘラートからカブールまで、徒歩で(途中から犬を連れて)横断した記録。 著者は、ゲストとして泊めてもらうこととなる人々、道で出会う人々が、宗派、部族も異…

殺人犯はそこにいる/清水潔

取材力に敬服する。 一方、このような気合の入った(思い込みいっぱいと取られても仕方ないような)取材の仕方は、警察庁にハッパをかけられた県警の捜査と同様の危うさを孕むように思える。 少なくとも表現の仕方としては、告発すべきは告発すべきとして、も…

コスパ飯/成毛眞

こだわりがすごい。 コスパ飯 (新潮新書) 作者: 成毛眞 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/04/15 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る

選べなかった命/河合香織

本書の主題とはズレるのだが、裁判による救済にはそもそも限界があるのではないかということを考える。最後の手段ということではあったのだろうけれど。 選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子 作者: 河合香織 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 201…

日本軍兵士/吉田裕

驚くような発見なし。 日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書) 作者: 吉田裕 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2017/12/20 メディア: 新書 この商品を含むブログ (12件) を見る

ポピュリズムとは何か/水島治郎

既存政党の政策が妥協の模索によって中庸によることによって選択肢を提供できなくなり、その中で、ポピュリズムは、置き去りにされたと感じる人々の声を吸い上げる。我が国で言えば、維新なのだが。 ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (…

五色の虹/三浦英之

満州建国大学は、五族協和を唱える満州国のエリートを養成するために設立され、日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシア各民族から選抜された優秀な人材が、寮生活をしながら、自由闊達な議論を繰り広げたという。その卒業生たちに対するインタビューなどを通じ…

未来をはじめる/宇野重規

豊島岡女子中高生に対する著者の政治思想・哲学+αに関する特別授業。加藤陽子の「それでも日本は戦争を選んだ」と同様の仕立てで、様々なジャンルでこのような取組が行われるといいと思う。 本書に物足りなさを感じるところもあるのだが、これは、本書がま…

定年後/楠木新

読む本がなくなって止むを得ず読んだみたいなものなので特に文句もないが、つまらない。 定年後 - 50歳からの生き方、終わり方 (中公新書) 作者: 楠木新 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2017/04/19 メディア: 新書 この商品を含むブログ (14件) を見…

現代社会はどこに向かうか/見田宗介

明るく、ポジティブな、人類社会の現状分析と未来予測。経済成長なき定常社会は、生の合理化=現在の空疎化という圧力から解放され、無数の至福が一斉に開花する高原であると。 「軸の時代」が定常期たる原始時代から爆発期たる近代社会への変節期であるとす…

科学者はなぜ神を信じるのか/三田一郎

本書で紹介される超一流の物理学者が神をなぜ信じるのかという考え方の道筋、折合いの付け方、あるいは神からの影響の受け方は、様々に興味深い。 著者は、科学法則の創造者が神であるとの考えであり、宇宙のはじまりを、科学法則を誰が作ったかを突き詰めて…

ドストエフスキー 父殺しの文学/亀山郁夫

比較的最近読んだカラマーゾフの兄弟などはまだなんとかなるのだが、各テキストの要旨なども記載されているものの、結構厄介だった。 ここまでのめり込むような謎解きの作業は、学者の領分だろうと、理解力の及ばぬところを棚に上げておく。 ドストエフスキ…

タイワニーズ/野嶋剛

日本と台湾との関係は、本省人と外省人更には「台湾人」、また、中華民国と中共との関係といった対立図式の中で、複雑なものとなっている。そんな中で比較的良好な関係が維持されているのは、本書で取り上げられるような人々の活躍があったからであると。 取…

大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清/松元崇

高橋是清の自伝というより、明治維新から太平洋戦争に至るまでの日本を、財政、金融、税制の面から見たもの。この時期の歴史を扱う本は多いが、このような切り口はとても興味深く、なるほどと思わせるところが沢山あった。 大恐慌を駆け抜けた男 高橋是清 作…

花殺し月の殺人/デイヴィッド・グラン

ネイティブ・アメリカンの大量殺人は、西欧・白人植民地主義の流れの中で白人以外はヒトに非ずという差別意識がなお強かった(というか、それが当然のこととして、意識すらされない)時代の悲劇なのだろう。もちろん、時代のせいとしてその行為が正当化される…