HONMEMO

読書備忘録です。

エッセイ

零戦/堀越二郎

1970年に書かれたものを「風立ちぬ」公開に合わせて復刊・文庫化したもの。 技術開発は、厳しい現実的な条件の中で、既成の考え方を打ち破る発想で、当然に考えられるぎりぎりの成果をどうやって一歩抜くかを考えることであり、零戦ほどそのような考え方が象…

私の嫌いな10の人びと/中島義道

醜い日本の私でもうるさい日本の私でも本書でも氏の思想は変わらない。あたりまえだ。 当人がどんな思想をどれだけ自分の固有の感受性に基づいて考え抜き鍛えぬいているかが決め手となる。つまりその労力に手を抜いている人は嫌いなのです。 一番手抜きがし…

海軍主計大尉小泉信吉/小泉信三

慶應義塾の塾長であった小泉信三による戦死した息子信吉のメモワール。おおよそ30年ぶりの再読。 出征に当たり、著者は、息子信吉あての手紙に次のように書く。 君の出征に臨んで言って置く。 吾々両親は、完全に君に満足し、君をわが子とすることを何よりの…

東京骨灰紀行/小沢信男

関東大震災、東京大空襲の被災者の眠る両国旧被服廠跡、小伝馬町の牢屋跡、小塚原(千住)、聖路加・本願寺の築地、谷中、多磨霊園、新宿などの「骨灰」をめぐる散歩エッセイ。 わたしも一時「墓マイラー」の仲間入りをして、雑司ヶ谷、谷中、染井、多磨など…

ソロモンの指輪/コンラート・ローレンツ

ローレンツは、「攻撃」が大学教養課程の時の推薦書か何かになっていて、ちょこっと読んだ記憶があるのだが。 コクマルガラスのチョック、ハイイロガンのマルチナなど有名なエピソードも含めて、楽しい本。 翻訳は、(もちろん)日高敏隆。 ソロモンの指環―…

「アメリカ社会」入門/コリン・ジョイス

イギリス人からみて、日本も変だが、アメリカの方がよほど変だと。 アメリカがスタンダードだと考えがちなのだけど、やはりアメリカは変なんだ。 以下Amazonからコピー 出版社からのコメント ○ 「ありがとう」の返礼が、なぜ「たしかに」なの? ○ スポーツは…

世界を、こんなふうに見てごらん/日高敏隆

2009年、著者が亡くなる直前に書かれたエッセイで、あとがきを書く前に亡くなったようだ。メッセージ性の高い文章になっている。 人間は真実を追究する存在だといわれるが、むしろ真実でないこと、つまりある種のまぼろしを真実だと思い込む存在だというほう…

街場の大阪論/江弘毅

大資本によるチェーン展開の店はつまらない、「知っている」店がいい、というお話がしつこく繰り返される。そりゃそうでしょ。 大阪についての本を2冊続けて読んだが、いずれもさっぱり…。 街場の大阪論 (新潮文庫)作者: 江弘毅出版社/メーカー: 新潮社発売…

大阪学/大谷晃一

第1章から5章までが大阪の風俗(いわゆるフーゾクではなくて)について、そのあとは、楠木正成、蓮如、信長・秀吉、西鶴、上田秋成、契沖、山片蟠桃、織田作之助、武田鉄太郎、宇野浩二などの人物論が中心で、なんだか中途半端。 大阪学 (新潮文庫)作者: 大…

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる/石井好子

1963年上梓。暮らしの手帳に連載されていたということで、ああそれらしい、そういう雰囲気、手触りがあるなと思う。ほとんど料理の作り方ばかりが書かれているのだけれど、それにとどまらず、パリ(西欧)というと、まだまだアクセスがとても大変な時代に、そ…

女たちよ!/伊丹十三

1968年上梓の、食、酒、女、車、ファッションなどにまつわるエッセイ。 その映画にもみられる徹底した細部へのこだわりは著者ならではで、当時、庶民には馴染みの薄いアルデンテのスパゲッティ、アボカド(=鰐梨!)、フランスパン、カマンベールについての…

上海にて/堀田善衛

1945年3月から46年末までの上海での生活を57年の再訪を機に振り返るエッセイ。 あの時(8月15日)天皇はなんと挨拶したか。負けたとも降伏したとも言わぬというのもそもそも不審であったが、これらの協力者に対して、遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得スという、この嫌…

建築に夢をみた/安藤忠雄

2000年のNHKの番組のテキストを再構成したもの。安藤忠雄が建築や都市計画さらにはより広く環境、社会について考えたこと、そしてそれと関連して自らの仕事について語る。 安藤建築探訪ガイドつき。いずれ関西から直島まで、見てまわりたい。 建築に夢をみた…

蝶とヒットラー/久世光彦

鳥獣剥製店、義眼工房、地下軍装店、自鳴琴(オルゴール)博物館、昆虫博物館などをめぐるロマネスクなエッセイ。 <まどろみ>という言葉が好きである。…発条(ぜんまい)がいまにもほどけきろうとする時の、オルゴールの臨終(いまわ)の音、ためらいなが…

熊野でプルーストを読む/辻原登

書評、エッセイなど雑文集。 「本屋大賞」を正面から腐していて、根性を感じる。『(書店員の書いたポップの)文章はたいていひどい悪文。確信をもって言うが、書店員がスーパーの店員より本をたくさん読んでいるわけではない。』だって。書店員敵に回してど…

はい、泳げません/高橋秀実

「弱くても勝てます」がツボだったので。スイミングスクールで水泳を習うのだが、ちょっと考えすぎだろ、という感じ。「弱くても勝てます」の開成高校の生徒の理屈っぽさは、著者高橋秀実のそんな「考えすぎ」の性格の投影なんだな…。 「考える人」に連載さ…

そうか、もう君はいないのか/城山三郎

先に逝った妻との日々を綴ったエッセイ。著者の死後発表されたもの。娘さんによる城山三郎死去までの氏の様子を綴った文章もまた涙を誘う。 解説は児玉清。氏も鬼籍に入った。 そうか、もう君はいないのか (新潮文庫)作者: 城山三郎出版社/メーカー: 新潮社…

東京震災記/田山花袋

関東大震災直後の田山花袋のエッセイ、ルポ。もうひとつピンとこない。安政の大地震の経験がすっかり忘れられているという話が深められることはなく、遷都論に話が飛んでしまう。今日また墨田区など危険地域だという報道があったけれど、地権の問題もあって…

神谷美恵子日記/神谷美恵子

「生きがいについて」を読んで、著者の日記も読みたいと思ってから何年になるか。 「生きがいについて」を書く人は、このように意志強く自らを奮い立たせる人であり、家族を思う人であるのだなと。心の持ち方の次元が違う。ただただ感じ入るのみ。 神谷美恵…

日本ぶらりぶらり/山下清

放浪の画家とか、裸の大将とか呼ばれた山下清の放浪記。といっても、有名になってから後見人とも言うべき式場某氏らと行った取材旅行の際のものが多いので、放浪記というよりは旅行記。式場氏によるあとがきによると、文章も式場氏による手が入っているもの…

清貧の思想/中野孝次

20年前のベストセラー。バブルが崩壊して、こういう本が読まれるけれど、モノの呪縛を解くのは容易ではなく。 いずれ徒然草をゆっくりと。西行も。 清貧の思想 (文春文庫)作者: 中野孝次出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1996/11メディア: 文庫購入: 3人 ク…

新・堕落論/石原慎太郎

まあ想定の範囲内というか。福永武彦「草の花」を評価していて、ちょっと意外。福永武彦は学生の頃いくつか読んで、好きだったけれど、すっかり忘れている。 新・堕落論―我欲と天罰 (新潮新書)作者: 石原慎太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/07メディ…

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩

日本のメディアが伝えないアメリカの変な現実を拾ったコラム(本書前書から)。時事、映画、政治、東スポ的なネタなどなどを独自の視点で切り取っていて、刺激的。 キャプテン・アメリカはなぜ死んだか (文春文庫)作者: 町山 智浩出版社/メーカー: 文藝春秋…

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか/小池滋

表題作のほか、 電車は東京市の交通をどのように一変させたか 田山花袋「少女病」 荷風は市電がお嫌いか 永井荷風「日和下駄」 どうして玉ノ井駅が二つもあったのか 永井荷風「墨東綺譚」 田園を憂鬱にした汽車の音は何か 佐藤春夫「田園の憂鬱」 蜜柑はなぜ…

東京瓢然/町田康

町田康によるぶらり旅エッセイ。 「汚れちまった六根に今日も栄螺の降りかかる。」とか、 なぜか一本足りなかった串カツへの拘泥とか、 ぐふふ、わはは。 東京飄然 (中公文庫)作者: 町田康出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2009/11/24メディア: 文庫購…

腹の虫/中川一政

昭和50年に日経に連載された私の履歴書に加筆したもの。履歴書にしては一風変わっていて、生い立ちなども書かれてはいるものの、ほとんどが芸術論です。短歌に飽き足らずに画の世界にはいったというのも肯なるかなというあじのある、また、まさにその絵画そ…

小さな手袋/小沼丹

これも手にしたきっかけを忘れていますが、堀江敏幸が言及していたのだったか…。師の井伏鱒二、庄野潤三、木山捷平との交遊や庭の植物のことなどなど、さりげないユーモアが楽しい。表題作は、掌編小説のようでもあります。 小さな手袋 (講談社文芸文庫―現代…

海山のあいだ/池内紀

ドイツ文学者による登山などの紀行文や生い立ちの記風のもの、掌編小説のようなものなどを収録した初出1994年の講談社エッセイ賞受賞作です。 海山のあいだ (角川文庫ソフィア)作者: 池内紀出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1997/06メディア: 文庫この商品…

生物学的文明論/本川達雄

「ゾウの時間 ネズミの時間」の著者がNHKラジオで講演した講演原稿を本にしたものだそう。 閉経以降の生は生物学的にみると存在する根拠のない、技術の作りだした人工生命体というべきものだ。だから、老後においては、次世代のために働くことを広い意味での…

わたしの旅に何をする。/宮田珠己

椎名誠系(といってもずいぶん違うけれど)の旅エッセイ。独特のユーモアを素直に楽しめるかどうかで評価が割れそうです。 わたしの旅に何をする。 (幻冬舎文庫)作者: 宮田珠己出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2007/06メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 31…