エッセイ
堀江敏幸のエッセイといえば、回送電車シリーズがあるが、本書がそれに位置づけられていないのは、短い独立したエッセイを集めたものでありながら、正弦曲線というコンセプトでくくられているためということだろうか。 日々を生きるとは、体内のどこかに埋め…
いろいろな意味で対照的なポジションにある2人の国会議員による 議員になるまで 国会議員としての仕事と生活 閣僚など政権内での仕事 についてのエッセイ(短い対談付き)。それぞれになかなか面白い。 選挙制度、統治機構のあり方は、真剣に議論されるべきだ…
クソ本は世に数多あるが、本書は、そういうクソみたいな本ではなく、クソについて真面目に考え、取り組んだ本。 まあ、つきあいきれん、という感じではあるが。本書を、ウェッと思うことなく読み通せれば、糞土師の愛弟子となれるであろう。くう・ねる・のぐ…
個性的な2人による仏像鑑賞。観念的な見方をするいとう、即物的な傾向のみうら。鑑賞はどこまでも自由。見仏記 (角川文庫)作者: いとうせいこう,みうらじゅん出版社/メーカー: 角川書店発売日: 1997/06メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 44回この商品を含む…
昭和の日本映画全盛期を支えたトップスターの一人、高峰秀子の半生記。 美女のものとは思えない男勝りの文体、勝気な、芯の通った生き方は、「渡世」日記というにふさわしい。 養母(親類、縁者も)とのバトルが凄まじいが、一方、谷崎潤一郎、梅原龍三郎、新…
昨年亡くなった辻井喬(堤清二)の回想録。 経営と文学という水と油ほども異なる二つの分野で、超一流の業績を残したが、本書で次のように書かれていて、やはりなかなか簡単なことではないのだろうなと思う。 自分にも難解に見えた条件として、経営者である人…
元NHKアナウンサーの著者がNHKでの経験なども踏まえながら、メディアについて考えていることを記したエッセイ。 NHKという組織を半ば追われるように去っても、そのような既存メディアを全否定するような短絡に走らず、市民のためのメディアということを真剣…
うくく。耳そぎ饅頭 (講談社文庫)作者: 町田康出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/01/14メディア: 文庫 クリック: 6回この商品を含むブログ (58件) を見る
著者は探偵ナイトスクープのプロデューサー。番組での取材をきっかけにアホ•バカ表現の分布や語源を調べていく。結論は柳田國男の方言周圏論を支持する興味深いもの。全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路 (新潮文庫)作者: 松本修出版社/メーカー: 新…
原発、沖縄、諫干、上九一色など、世論とか一般的な理解、イメージというのは結構いい加減で、現場は簡単には語れない複雑なものなんだと。大事な視点。 解説は村上春樹。からくり民主主義 (新潮文庫)作者: 高橋秀実出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/11/…
官僚制度にいろいろ問題があるにせよ、優秀な人材が外資系金融機関を志向する一方で、若手官僚が官僚バッシングの中で辞めていくという実態は歪んでいる。官僚制度は冷静にきちんと検証する必要があるのではないだろうか。30歳キャリア官僚が最後にどうして…
様々な媒体に発表された小文をまとめた回送電車シリーズの3冊目。回送電車Ⅱはまだ読んでいない。 表題作はバイロンと関係があるのかと思ったが、そうではなくて、アイロンに関係するフランス語から派生するユーモラスな妄想。 「大学の送迎バスに乗り遅れた…
著者は、元TBSアナウンサーで、菅直人元首相の要請で官邸に入り、広報担当の審議官として働いた。その経験を踏まえて考えたことを語りかけるような飾らない文体で綴っている。 「お任せ民主主義」からの脱却 市民の側も、自分たちが選んだ政治家を支える意識…
1962年初版のロングセラー。 ビルマ南部で終戦を迎え、英国軍の捕虜として収容所で2年にわたり強制労働の日々を送った記録。 イギリス人は士官と兵とで階級社会を反映した大きな違いが見られ、また、日本人を家畜同様にみている。いかな捕虜であるとはいえ、…
1970年に書かれたものを「風立ちぬ」公開に合わせて復刊・文庫化したもの。 技術開発は、厳しい現実的な条件の中で、既成の考え方を打ち破る発想で、当然に考えられるぎりぎりの成果をどうやって一歩抜くかを考えることであり、零戦ほどそのような考え方が象…
醜い日本の私でもうるさい日本の私でも本書でも氏の思想は変わらない。あたりまえだ。 当人がどんな思想をどれだけ自分の固有の感受性に基づいて考え抜き鍛えぬいているかが決め手となる。つまりその労力に手を抜いている人は嫌いなのです。 一番手抜きがし…
慶應義塾の塾長であった小泉信三による戦死した息子信吉のメモワール。おおよそ30年ぶりの再読。 出征に当たり、著者は、息子信吉あての手紙に次のように書く。 君の出征に臨んで言って置く。 吾々両親は、完全に君に満足し、君をわが子とすることを何よりの…
関東大震災、東京大空襲の被災者の眠る両国旧被服廠跡、小伝馬町の牢屋跡、小塚原(千住)、聖路加・本願寺の築地、谷中、多磨霊園、新宿などの「骨灰」をめぐる散歩エッセイ。 わたしも一時「墓マイラー」の仲間入りをして、雑司ヶ谷、谷中、染井、多磨など…
ローレンツは、「攻撃」が大学教養課程の時の推薦書か何かになっていて、ちょこっと読んだ記憶があるのだが。 コクマルガラスのチョック、ハイイロガンのマルチナなど有名なエピソードも含めて、楽しい本。 翻訳は、(もちろん)日高敏隆。 ソロモンの指環―…
イギリス人からみて、日本も変だが、アメリカの方がよほど変だと。 アメリカがスタンダードだと考えがちなのだけど、やはりアメリカは変なんだ。 以下Amazonからコピー 出版社からのコメント ○ 「ありがとう」の返礼が、なぜ「たしかに」なの? ○ スポーツは…
2009年、著者が亡くなる直前に書かれたエッセイで、あとがきを書く前に亡くなったようだ。メッセージ性の高い文章になっている。 人間は真実を追究する存在だといわれるが、むしろ真実でないこと、つまりある種のまぼろしを真実だと思い込む存在だというほう…
大資本によるチェーン展開の店はつまらない、「知っている」店がいい、というお話がしつこく繰り返される。そりゃそうでしょ。 大阪についての本を2冊続けて読んだが、いずれもさっぱり…。 街場の大阪論 (新潮文庫)作者: 江弘毅出版社/メーカー: 新潮社発売…
第1章から5章までが大阪の風俗(いわゆるフーゾクではなくて)について、そのあとは、楠木正成、蓮如、信長・秀吉、西鶴、上田秋成、契沖、山片蟠桃、織田作之助、武田鉄太郎、宇野浩二などの人物論が中心で、なんだか中途半端。 大阪学 (新潮文庫)作者: 大…
1963年上梓。暮らしの手帳に連載されていたということで、ああそれらしい、そういう雰囲気、手触りがあるなと思う。ほとんど料理の作り方ばかりが書かれているのだけれど、それにとどまらず、パリ(西欧)というと、まだまだアクセスがとても大変な時代に、そ…
1968年上梓の、食、酒、女、車、ファッションなどにまつわるエッセイ。 その映画にもみられる徹底した細部へのこだわりは著者ならではで、当時、庶民には馴染みの薄いアルデンテのスパゲッティ、アボカド(=鰐梨!)、フランスパン、カマンベールについての…
1945年3月から46年末までの上海での生活を57年の再訪を機に振り返るエッセイ。 あの時(8月15日)天皇はなんと挨拶したか。負けたとも降伏したとも言わぬというのもそもそも不審であったが、これらの協力者に対して、遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得スという、この嫌…
2000年のNHKの番組のテキストを再構成したもの。安藤忠雄が建築や都市計画さらにはより広く環境、社会について考えたこと、そしてそれと関連して自らの仕事について語る。 安藤建築探訪ガイドつき。いずれ関西から直島まで、見てまわりたい。 建築に夢をみた…
鳥獣剥製店、義眼工房、地下軍装店、自鳴琴(オルゴール)博物館、昆虫博物館などをめぐるロマネスクなエッセイ。 <まどろみ>という言葉が好きである。…発条(ぜんまい)がいまにもほどけきろうとする時の、オルゴールの臨終(いまわ)の音、ためらいなが…
書評、エッセイなど雑文集。 「本屋大賞」を正面から腐していて、根性を感じる。『(書店員の書いたポップの)文章はたいていひどい悪文。確信をもって言うが、書店員がスーパーの店員より本をたくさん読んでいるわけではない。』だって。書店員敵に回してど…
「弱くても勝てます」がツボだったので。スイミングスクールで水泳を習うのだが、ちょっと考えすぎだろ、という感じ。「弱くても勝てます」の開成高校の生徒の理屈っぽさは、著者高橋秀実のそんな「考えすぎ」の性格の投影なんだな…。 「考える人」に連載さ…