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読書備忘録です。

ノンフィクション

海峡に立つ/許永中

イトマン事件の主人公の一人として知られる許永中の自伝。戦後からバブル期に暗躍した在日のフィクサー。自身からみるとイトマン事件は全くの無実、検察の陰謀であると。 海峡に立つ:泥と血の我が半生 作者:許 永中 発売日: 2019/08/28 メディア: 単行本

女たちのシベリア抑留/小柳ちひろ

NHKのドキュメンタリーの取材をもとにまとめたもの。 女性抑留者には、看護婦や電話交換手、中には芸者などもいて、看護婦として働いたり、極寒の中を畑仕事をさせられたり、あるいは囚人として矯正労働をさせられたり。男性と同様の重労働は課せられないよ…

地形の思想史/原武史

タイトルは、分からなくはないが、大きすぎというか。それぞれあるテーマをもとにして、ちょっと地形にも絡めて、色々と考える旅行記という感じ。 ・「岬」 現上皇が皇太子時代に夏を過ごした浜名湖のプリンス岬のこじんまりとした保養所での日々は、当時の…

ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと/奥野克己

ボルネオ島に暮らす狩猟採集民族プナンは、反省しない。 プナンでは、寛大な心で与えられたものを最も頻繁に分け与える人物がビッグマンとして尊敬される。彼自身は最も質素。 プナンは、個人所有を前提として貸す、借りるということがなく、共有することが…

アフリカの難民キャンプで暮らす/小俣直彦

著者は、オックスフォード大学難民研究センター主任研究員。ロンドン大学で博士号取得のため必要な「難民の経済生活」調査のため、2008年にガーナのリベリア難民キャンプに入り、1年余を現地ブジュブラムで暮らす。 難民が受け入れ国に滞在する期間は平均で2…

おすもうさん/高橋秀実

国技、伝統、品格の相撲もこの著者にかかると、なんだかゆるゆる、ほんわか。独特のユーモアの中に戦時中の相撲などへーもあって、くせになる。 おすもうさん 作者:高橋秀実 (たかはし・ひでみね) 出版社/メーカー: 草思社 発売日: 2010/08/24 メディア: …

魔王/エヴァン・ラトリフ

ネタバレ 大規模な違法インターネット薬局事業、ソマリアでのマグロ漁(セーシェルのクーデター偽装目的)、武器や麻薬取引など闇の世界の元締め、殺人も意に介さない特異な人格ル・ルーの物語。 アメリカでも異例と受け止められているようだが、犯罪組織のト…

悩める法王フランシスコの改革/秦野るり子

貧者に寄り添う「改革派」法王。 法王には、巨大組織を動かす俗的な能力が必要とされると。 取り組んでいる改革は、以下のように多岐にわたる。 ・意識改革、機構改革(地方分権など) ・バチカン銀行改革 ・他宗教、他教派、他国との関係改善 ・中国問題 ・性…

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ

日本で暮らしていると分からない"ダイバーシティ"の実際。 母子の会話: 「多様性ってやつは物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃないほうが楽よ」 「楽じゃないものが、どうしていいの?」 「楽ばっかりしてると、無知になるから」 これ…

パンと野いちご/山崎佳代子

第2次大戦、ユーゴスラビア紛争下での旧ユーゴスラビアの人々の食を中心とする?記憶の聞き書き。6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教などと言われる極めて複雑な地域であることなどにもよるのだが、もう少し整理してもらわないと、読むのが辛い。…

最後の秘境 東京藝大/二宮敦人

東京藝大の学生たちへのインタビュールポ。 藝大は音楽と美術の両方をもつ点に特徴がある(言われてみればそうだ)。音楽は一過性の芸術であるのに対し、美術は作品が残るといったことなどを反映してか、音校と美校の学生にはそれぞれカラーみたいなものがあり…

天皇の憂鬱/奥野修司

天皇の憂鬱とは、 皇位継承問題と国民との距離感 天皇の憂鬱 (新潮新書) 作者: 奥野修司 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/03/14 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る

モンスターマザー/福田ますみ

この母親の言動は人格障害によるもので、問題は学校にではなく、母親にあるということは比較的容易に明らかになるものだったように思う。それを子供の自殺という最悪の結果に追いやったのは、いじめ問題というステロタイプに押し込めようとする人権派弁護士…

団地と移民/安田浩一

高齢化が進む郊外の団地に外国人労働者(移民)が流入して、住民のほとんどが高齢者と外国人というところが出てきている。高齢化に伴う孤独死などの問題と貧困、文化摩擦への対応、それはまさに、これからの日本が否応なく向き合わなくてはならない状況を先取…

恐怖の男/ボブ・ウッドワード

トランプ政権の意思決定過程が、まるでホワイトハウスで大統領の隣で見ているかのように記されていて、出色。 トランプ大統領は、極めて感情的で、気まぐれ。知能が低いとか小学生のようだなどと周りから評され、ブリーフィングをまともに聞くことも出来ず、…

さいはての中国/安田峰俊

-深圳のネトゲ廃人 (NHKで同様の特集を見た。) 社会主義中国の経済社会の矛盾 - 広州のリトルアフリカ 中国がアフリカに大々的に投資をしている一方で、実はアフリカからの移民が相当程度ある。アフリカ移民に対し、中国人が「連中は声が大きくて態度が傲慢…

死に山/ドニー・アイカー

60年前、冬のソ連ウラル山脈での若者9人の遭難事故。遭難者たちは、靴を履かず、衣服もろくに着けず、重傷を負ったものや舌がなくなっている者もあり、衣服からは放射線が検出された。ソ連時代という背景などもあって、謎の提示は圧倒的なのだが、ノンフィク…

小泉信三/小川原正道

小泉信三は、小熊英二のいう「オールド・リベラリスト」(大正期に青年時代を送り、共産主義を嫌悪し天皇を敬愛する自由主義者。都市中産階級以上の出身で、一般民衆から隔絶している。軍国主義は突発的異常事態であり、それ故正常な大正に帰ればよい)ではあ…

ふたつのオリンピック/ロバート・ホワイティング

ライター&ジャーナリストの名刺を持つ著者が、1962年、米軍諜報部員として来日して以来、今日に至るまでの自伝的ノンフィクション。 タイトルはいわば象徴的なもので、オリンピックに重点はなく、半世紀以上にわたる日米の政治・社会、裏社会、スポーツ、ジ…

戦禍のアフガニスタンを犬と歩く/ローリー・スチュワート

2002年初頭、休暇中のイギリス外交官が、タリバン政権崩壊直後の冬のアフガニスタン中部山岳地帯をヘラートからカブールまで、徒歩で(途中から犬を連れて)横断した記録。 著者は、ゲストとして泊めてもらうこととなる人々、道で出会う人々が、宗派、部族も異…

殺人犯はそこにいる/清水潔

取材力に敬服する。 一方、このような気合の入った(思い込みいっぱいと取られても仕方ないような)取材の仕方は、警察庁にハッパをかけられた県警の捜査と同様の危うさを孕むように思える。 少なくとも表現の仕方としては、告発すべきは告発すべきとして、も…

選べなかった命/河合香織

本書の主題とはズレるのだが、裁判による救済にはそもそも限界があるのではないかということを考える。最後の手段ということではあったのだろうけれど。 選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子 作者: 河合香織 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 201…

五色の虹/三浦英之

満州建国大学は、五族協和を唱える満州国のエリートを養成するために設立され、日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシア各民族から選抜された優秀な人材が、寮生活をしながら、自由闊達な議論を繰り広げたという。その卒業生たちに対するインタビューなどを通じ…

タイワニーズ/野嶋剛

日本と台湾との関係は、本省人と外省人更には「台湾人」、また、中華民国と中共との関係といった対立図式の中で、複雑なものとなっている。そんな中で比較的良好な関係が維持されているのは、本書で取り上げられるような人々の活躍があったからであると。 取…

花殺し月の殺人/デイヴィッド・グラン

ネイティブ・アメリカンの大量殺人は、西欧・白人植民地主義の流れの中で白人以外はヒトに非ずという差別意識がなお強かった(というか、それが当然のこととして、意識すらされない)時代の悲劇なのだろう。もちろん、時代のせいとしてその行為が正当化される…

15時17分、パリ行き/アンソニー・サドラーほか

パリ列車テロの模様とそれを阻止したアメリカ人3人のそれまでの人生、事件後の狂騒を描く。事件そのものの記述が少ないのに驚く。 ヒーローとなった3人のその後の人生がどうなるのか、持ち上げられ、大はしゃぎなだけに、その方が気になる。 15時17分、パリ…

されど愛しきお妻様/鈴木大介

脳梗塞に倒れ自らも高次脳機能障害を負うことによってはじめて、大人の発達障害を抱える妻の苦しみが真に理解されて、夫婦関係は大きく変化していく。 障害者理解の「ためになる本」という読み方もあろうが、1組の夫婦のノンフィクションとして、不謹慎な物…

ヒルビリー・エレジー/J.D.ヴァンス

白人貧困層(ヒルビリー)の実相を自らの体験として描いて、アメリカ社会の分断がいかに深いものかが、痛いほどによくわかる。 この層をターゲットとしたキャンペーンがトランプ大統領を生んだと言われるが、トランプの政策は一見彼らのウケを狙うように見える…

量子革命/マンジット・クマール

量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫) 作者: マンジットクマール,Manjit Kumar,青木薫 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/01/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る

オリバー・ストーン オン プーチン/オリバー・ストーン

-「 今必要なのは、新たなパラダイム、国家間の関係構築に対する新たな理念への移行だと思う。新たなパラダイムは、他国の利益、他国民の主権を尊重する姿勢に基づくものでなければならない。」 いろいろと割り引いて聞く必要があるもの、あからさまなポジシ…