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HONMEMO

読書備忘録です。

地獄の季節/ランボオ

小林秀雄訳。1938年初版。 悲しい哉、私には、良さが全くわからない。 地獄の季節 (岩波文庫)作者: ランボオ,J.N.A. Rimbaud,小林秀雄出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1970/09メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 36回この商品を含むブログ (57件) を見る

月のしずく/浅田次郎

96〜97年、鉄道員と前後して書かれた人情もの短編集。 表題作月のしずく 辰夫 聖夜の肖像 純一郎 銀色の雨 章次 琉璃想 西岡 花や今宵 芳男 ふくちゃんのジャック・ナイフ ふくちゃん ピエタ ミスター・リー それぞれ、まあドラマでしかちょっとお目にかかれ…

鉄塔家族/佐伯一麦

アスベストによる喘息、鬱病として時に現れる自身の幼少期のトラウマ、神経症的な前妻との間の子供の家出などの厄介ごとを抱えつつも、草花を愛で鳥の声に聞き入り、暖かい隣人に囲まれて穏やかに暮らす。そんな私小説。 鉄塔家族 上 (朝日文庫 さ 32-2)作者…

ブラフマンの埋葬/小川洋子

奥泉光の解説以上に言うところなし。 ブラフマンは、子犬のようでありながら、水掻きを使って水へ深く潜水したりする生き物であり、全編に漂う不可思議な雰囲気の中核をなすのだけれど、それ以上に、名前のない人間たちこそ(…)謎めいている。誰より、主人公…

サクリファイス/近藤史恵

ちょいとネタばれ注意。 自転車ロードレースでは、チームのエースの勝利という観点から自己犠牲を求められる「アシスト」と呼ばれるポジションがある(主人公白石はこのポジション)。一方、レースに仕組まれた陰謀に、自己犠牲の精神を発揮するのは、「エー…

イワン・デニーソヴィチの一日/ソルジェニーツィン

シベリア収容所での一日を体験に基づいて淡々と描いている。 日本人のシベリア抑留について 収容所(ラーゲリ)から来た遺書/辺見じゅん 不毛地帯/山崎豊子 夢顔さんによろしく/西木正明 といった本を読んだ後では、なんだかあまりに淡々としていて、明るささ…

ガラスの動物園/テネシー・ウィリアムズ

訳者小田島雄志が解説で書いているように、「ウィンフィールド一家が家族としていわば普遍性をおびている」「家族というものが、外なる現実社会にたいしてはおたがいに寄りそうと同時に、家族内部においてはそれぞれが究極的には孤独であることを思い当たら…

街の灯/北村薫

とんでもなく久しぶりに北村薫。ベッキーさんシリーズの第1作。「虚栄の市」「銀座八丁」そして表題作3編の連作短編。昭和初期の上流階級の風俗が楽しい。 何が謎って、ベッキーさんが魅力的ななぞだわな。 街の灯 (文春文庫)作者: 北村薫出版社/メーカー: …

吉原手引草/松井今朝子

花魁葛城の失踪の謎について、関係者が逐次語っていくという有吉佐和子「悪女について」のようなスタイルの小説。その語りは、淀みなく、落語を聞いているかのように楽しいものではあるけれど、「悪女について」のような、語り手によって対象の印象が大きく…

許されざる者/辻原登

毎日新聞に連載されたものということもあって、著者の短編小説にあるような難解ともいえる企みのない、読みやすい長編の物語。小説の楽しみが満載*1。アンナ・カレーニナのような姦通小説であり、(日露戦争を背景とした)「戦争と平和」(読んでいないけど…

時が滲む朝/楊逸

天安門事件の民主化運動に挫折、日本で家族を作り、生活する中国人主人公の想い。芥川賞受賞。 時が滲む朝 (文春文庫)作者: 楊逸出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/02/10メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (7件) を…

アサッテの人/諏訪哲史

その企みが様々にあるにせよ、ちと、ついていけません。ポンパ。 本書で芥川賞受賞。 アサッテの人 (講談社文庫)作者: 諏訪哲史出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/15メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (12件) を見る

草の上の朝食/保坂和志

プレーンソングの続編。このタイトルが、マネの「草上の昼食」の何やら不穏な雰囲気を想起させるように思うのは、私だけだろうか。 本書の創作ノート 草の上の朝食 (中公文庫)作者: 保坂和志出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2000/11メディア: 文庫 ク…

なずな/堀江敏幸

ひょんなことから弟夫妻の赤ん坊なずなを預かることになったコミュニティ紙の記者。赤ん坊は世界の中心で、人々をその引力で引き寄せてくる。これは赤ん坊を育てたことのある人(男でも女でも)にはたぶん馴染みのある感覚だろう。育児、赤ん坊のディテール…

うらなり/小林信彦

「坊っちゃん」という小説は、いわば、坊っちゃんが狂言回しとなったうらなり君と山嵐の悲劇という構造をもつと。なるほど。では、うらなり君の目から見ると「坊っちゃん」の物語はどのようになるか、延岡に飛ばされたうらなり君のその後の人生は…昭和9年に…

オートバイ/A.ピエール・ド・マンディアルグ

レベッカは結婚したばかりの19歳。夫が寝ているうちに素肌に黒革のレーサー服をまとい、恋人の元へとハーレー・ダビッドソンで驀走する。驀走するオートバイのリアル、かつての恋人との逢瀬(バラの花束で鞭打たれるなんてシーンもある)の回想のエロティシ…

タイタンの妖女/カート・ヴォネガット・ジュニア

独特の雰囲気があるSF。なんとなくアーヴィングに似たところがある気がするのだが。太田光の一押しで新装改版となったようだ。 タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF)作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,浅倉久志出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009…

劒岳/新田次郎

主人公は、測量官なる役人で、著者も気象庁の役人だったからか、その組織人としての悲哀みたいなものを書きたかったのかなとも思う。もっとドラマティックな構成にすることはできるのに…というところが、本書の良さでしょうか? 劒岳―点の記 (文春文庫 (に1-…

眠狂四郎無頼控(一)/柴田錬三郎

江戸時代、転び伴天連を父とするハーフという狂四郎の出自自体が凄い、だから狂四郎のハードボイルドっぷりは尋常でない。円月殺法もスゴイッ。 解説は遠藤周作。狂四郎は、ただのハードボイルド型主人公ではないと。 かつて改版前の第1巻だけ読んでいたのだ…

壬生義士伝/浅田次郎

NHK大河ドラマや映画にもなった新撰組もの…ではあるけれど、新撰組の華々しくも虚しい活躍を描くことを主題とした物語ではなく、武家社会の規範との相克と、真の義に生きようとする下級武士の家族愛を描く物語。やはり浅田次郎は通勤電車で読むのは大変。 解…

ひとり日和/青山七恵

芥川賞受賞。←石原慎太郎も◎か。ふーん。芥川賞らしいと言えばまあそんな感じ。追っかけて読もうといういう気はしない。 「出発」を併録。 ひとり日和 (河出文庫)作者: 青山七恵出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2010/03/05メディア: 文庫 クリック: 21…

けい子ちゃんのゆかた/庄野潤三

「子供たちが独立し、山の上のわが家に残された夫婦の豊かな晩年を描くシリーズ第十作」。その第何作か知らないけれど、かつて「せきれい」を読んだことがあって、その暖かい読後感に惹かれて、また本書を読んだのだけれど、いったいこの同じエピソードの繰…

ミレニアム1〜3/スティーグ・ラーソン

3部作合計で、文庫版6冊3000ページに及ぶ長編エンターテインメント。謎解きミステリー、サスペンスドラマ、バイオレンスアクション、リーガルサスペンスなどありとあらゆるエンターテインメントの要素を盛り込んだ、著者の処女作にして絶筆の大作。 首から腰…

看守眼/横山秀夫

表題作のほか、「自伝」「口癖」「午前五時の侵入者」「静かな家」「秘書課の男」 いずれもハッとするようなオチというかひねりがあって、短編の一つのお手本のような。 看守眼 (新潮文庫)作者: 横山秀夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/08/28メディア:…

夜想曲集/カズオ・イシグロ

男女の危機を通奏低音とした短編集。 夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/02/04メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 19回この商品を含むブログ …

カンガルー日和/村上春樹

初期の短篇集。「図書館奇譚」は、世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドの習作のよう。 カンガルー日和 (講談社文庫)作者: 村上春樹,佐々木マキ出版社/メーカー: 講談社発売日: 1986/10/15メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 120回この商品を含むブロ…

影法師/百田尚樹

読む本がなくなって、駅のホームの売店で購入。名前は知っていたが、ミステリー作家かと思っていた。 彦四郎の献身的な生き方が不自然という気がするというのはあるけれど、なかなか引き込まれる人情噺だった。全く期待していなかっただけに拾いもの。 単行…

モーパッサン短編選/モーパッサン

15編を収める。 「首飾り」は高校の教科書にあって、当時(30年以上も前になる)、国語の教師がこの結末について、余りに酷いと評していた記憶があるのだが、ひょっとすると夏目漱石の評の受け売りだったか。 モーパッサン短篇選 (岩波文庫)作者: モーパッサ…

鷲は舞い降りた/ジャック・ヒギンズ

第二次大戦中にドイツ軍によるチャーチル誘拐作戦が行われたというフィクション。 登場人物たちの背景が一筋縄でないことがストーリーを複雑に、面白くしている。主人公シュタイナ中佐は米国人の血が入っているし、部隊の中にはイギリス自由軍という裏切り者…

夜の公園/川上弘美

リリと幸夫は夫婦、 リリの親友春名は、幸夫と不倫。 リリは、夜の公園で出会った暁と関係。暁の兄悟は、春名と関係(心中未遂)。リリは妊娠して…。 まあどろどろながら、川上弘美らしくほんわか。 夜の公園 (中公文庫)作者: 川上弘美出版社/メーカー: 中央…

大いなる助走/筒井康隆

同人誌メンバーや直木賞選考委員など文壇の生態、直木賞選考過程を戯画化して、最高におもしろい。解説が大岡昇平。 (文春文庫)" title="大いなる助走 (文春文庫)">大いなる助走 (文春文庫)作者: 筒井康隆出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2005/10/07メディ…

八月の路上に捨てる/伊藤たかみ

解説の津村記久子と親和感あり。自販機の補充をして回る仕事のディテールと、その車上での主人公と水城さんのかけあいが面白い。主人公の離婚話は鬱陶しいばかりではあるけれど。 芥川賞受賞の表題作ほか、「貝からみる風景」、「安定期つれづれ」。 八月の…

銀座復興他三篇/水上滝太郎

大震災を契機に復刊されたものだろう。著者水上滝太郎のことは全く知らなかった。 表題作は、関東大震災で焦土と化した銀座で真っ先にバラックで飲み屋を始めた親父をはじめ、店に集う酔っぱらい達を描いて、復興に取り組む人々に勇気を与えるだろう。「九月…

第三の男/グレアム・グリーン

序文によるとそもそもが映画のために書いたものだそうだ。映画は著名なシーンだけ知っているけれど見ていない。ラストシーンはじめ、本書と異なる部分も多々あるようだが、映画が名作として聞こえるほどには本作はどうも、という感じはある。ただ、ウィーン…

剣客商売/池波正太郎

これは、何と言うか、大衆小説ど真ん中という感じの安心・安全小説だな。色気、食気、スリルとサスペンス、みんな中庸で、かつ登場人物がそれぞれ魅力的。 柴田錬三郎のハードボイルド眠狂四郎シリーズ(1巻しか読んでいない)を読みたくなった。 剣客商売 …

殉教・微笑/小島信夫

表題作のほか、小銃、吃音学院、星、アメリカン・スクール(芥川賞)、憂い顔の騎士たち、城壁を収める。 奥田英朗もいいけれど、これはまた別の次元の楽しみ。 小島信夫といえば、保坂和志→保坂和志による小島信夫の追悼文 殉教・微笑 (講談社文芸文庫)作者:…

わたしが・棄てた・女/遠藤周作

戦争直後、貧乏学生吉岡が弄んで棄てた田舎者のブサイクだけれど純情な娘森田ミツは、ハンセン病の疑いありとして、精密検査のために御殿場の療養施設へ行き…。遠藤周作の聖女物語。社長の縁戚の娘との結婚が決まった吉岡がハンセン病感染の恐れにおののく物…

サウスバウンド/奥田英朗

元過激派の権力嫌いの破天荒な父親に引っかきまわされる家族を小学校6年生の息子の目からみた、爽やかな物語。だいたい左翼過激派なんてのは、陰湿で暗〜いイメージなのだけれど、このお父さんは、体育会系で枠ははみ出ているけれど吞気で明るい。本当に毒が…

蒲団・一兵卒/田山花袋

自然主義文学の代表作ということで、文学史上に名を残す本だが、文章自体は下手くそな気がするし、若い女弟子の布団の匂いを嗅ぐなんてユーモア小説かという感じもするし。同時代に読むのとは違うのだろう。 蒲団・一兵卒 (岩波文庫)作者: 田山花袋出版社/メ…

老師と少年/南直哉

老師と少年の禅問答的な対話。今の私にはこの少年のような根源的な問いに向き合おうという気持ちがない。 老師と少年 (新潮文庫)作者: 南直哉出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/11/28メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 11回この商品を含むブログ (14件) …

ポトスライムの舟/津村記久子

「派遣世代」を代表する文学であるとの評価があると解説にある。芥川賞受賞の表題作はまさにそんな感じ。 併録の「十二月の窓辺」は、著者の体験をベースにしているようで、パワハラがとてもリアル。 ポトスライムの舟 (講談社文庫)作者: 津村記久子出版社/…

ジョーカー・ゲーム/柳広司

表題作のほか、幽霊、ロビンソン、魔都、XXからなる連作短編集。旧日本陸軍の非公式極秘スパイ養成機関を舞台とする、スパイ、コンゲームもの好きにはたまらない、絶品のエンターテインメント。シリーズ化しているようなので、これからも楽しみ。 吉川英治文…

火の山―山猿記/津島佑子

文庫本で1200ページを超えるということだけでなくて、様々な文学的形式を持ちこみ、地理的にはアメリカ、フランスにまで、時間的にも近代日本というだけでない広がりを持つ大作であり、また、作者津島祐子の一族をモチーフとしていること、女性、生と死とい…

家日和/奥田英朗

「サニーデイ」、「ここが青山」、「家においでよ」、「グレープフルーツ・モンスター」、「夫とカーテン」、「妻と玄米御飯」からなる夫婦、家族をモチーフとした短編集。うまい。面白い。だから、なんだかもの足りなくも思うけれど。 Wikiに「家日和」なん…

風花病棟/帚木蓬生

あとがきによると、小説新潮山本周五郎賞発表特集号用に毎年書いた短編をまとめたもののようだ。名医でも悪医でもない「普通の良医」を書いたという全10編。 風花病棟 (新潮文庫)作者: 帚木蓬生出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/10/28メディア: 文庫 ク…

乳と卵/川上未映子

「あなたたちの恋愛は瀕死」を併録。 関西弁の話し言葉をそのまま書いていくようなところがなかなかいい。町田康とは全然違うけれど。母と娘の話はやはり女性の方が実感できるかもしれない。 芥川賞受賞 乳と卵(らん) (文春文庫)作者: 川上未映子出版社/メー…

家族写真/辻原登

表題作のほか、わが胸のマハトマ、谷間、光線の感じ、緑色の経験、塩山再訪、松籟。表題作は、芥川賞受賞第1作として準備された作品とのこと。家族写真を撮るときにチーズではなく、「わたしはしあわせ」と心の中でつぶやいてくださいという写真屋、それを口…

町長選挙/奥田英朗

伊良部一郎シリーズの3作目。表題作のほか、「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」の計4短編。このシリーズははじめて読む。奥田英朗は、久しぶりに読んだ。かみさんの本棚にあったソフトカバー版で。 町長選挙作者: 奥田英朗出版社/メーカー: 文藝…

逃亡くそたわけ/絲山秋子

躁病で入院させられていた主人公が鬱病患者とともに脱走して九州をオンボロ車で逃亡するロードムービーのような小説。ビョーキなのにとてもまとも、真剣で、さわやかでもある。 逃亡くそたわけ (講談社文庫)作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 講談社発売日: 20…

空中庭園/角田光代

「秘密を持たない」家族のそれぞれが、実は(当然のことながら)なんともいろいろな「事情」を抱えていて、家族あるいはその関係者それぞれの目から見た家族の心理がどろどろと描かれていく。解説は石田衣良。 空中庭園 (文春文庫)作者: 角田光代出版社/メー…