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読書備忘録です。

フィクション

ボヴァリー夫人/フローベール

1857年の刊行ということで、日本でいえば幕末頃の作品。比較的裕福な田舎の農家の娘エンマは冴えない医者ボヴァリーに嫁いだが、不倫を重ね、借金まみれになって…というあらすじは知っていたが、夫人の末路は知らなかった。 山田ジャク訳。解説は、蓮實重彦…

舟を編む/三浦しおん

かみさんの本棚から。 ものに打ち込むことのさわやかさ。 舟を編む作者: 三浦しをん出版社/メーカー: 光文社発売日: 2011/09/17メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 1,184回この商品を含むブログ (283件) を見る

赤い高粱/莫言

中国東北部、一面こうりゃん畑が広がる広大な大地で生きる人々の素朴な生命力を感じる。特に、群像劇ではあるものの、主人公と言っていい「祖母*1」が魅力的。 5編からなる連作のうち2編を収めるものだが、残りを読もうという気はしない。むしろ映画は高い評…

草枕/夏目漱石

明治の一般大衆がこれを面白く読んだとは思わないが、知識人階級はここで言及されるような漢文やら俳句やらの素養を持っているのは当然だったのだろうか。 最近展覧会でみたミレイのオフィーリアは何度か繰り返し登場。実際の絵を知っているとイメージがわく…

群青/植松三十里

副題は、日本海軍の礎を築いた男。幕府海軍の草創期から海軍一筋に生き、総裁となった矢田堀景蔵の生涯を描く小説。 維新後も活躍し、歴史に名をとどめた勝海舟や榎本武揚などと比べ、「逃げた海軍総裁」という評判も立てられたりして維新後は政府の閑職をた…

宇宙戦争/H・G・ウェルズ

1898年上梓というから、明治30年の作。宇宙戦争というタイトル*1から、スターウォーズ的なものを想像したが、むしろマーズ・アタック。タコあるいはクラゲのような火星人というイメージは本書からなのかな? アーサー・C・クラークのイントロダクションがつ…

東京少年/小林信彦

昭和19年から埼玉への集団疎開、終戦後新潟県の遠い縁戚の家で、東京への思いを募らせながらの暮らし。 解説は坪内祐三。 東京少年 (新潮文庫)作者: 小林信彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/07/29メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 13回この商品を含…

神去なあなあ日常/三浦しをん

カバー裏に、林業エンタテインメント小説の傑作、とある。なにやら林業エンタテイメント小説というジャンルがあるようで、愉快。48年に一度の御柱祭のような村祭りの大祭や、神隠し、山おろしなどの不思議がなじむ山村の豊かな暮らしが楽しく描かれている。 …

狂人日記/色川武大

これはなかなかしんどい小説。著者は、ナルコレプシー(眠り病)という病気だったとか? 解説は佐伯一麦。 狂人日記 (講談社文芸文庫)作者: 色川武大,佐伯一麦出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/09/11メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 185回この商品を含…

天切り松闇がたり 1〜4巻/浅田次郎

浅田次郎のピカレスク・ロマン。「闇の花道」「残侠」「初湯千両」「昭和侠盗伝」 浅田次郎の作品の中で一番好きな「プリズン・ホテル」、「きんぴか」の系譜だが、ユーモラスなところはあるとしても、スラップスティックとはいえないところが違うかな。 第3…

花はさくら木/辻原登

大阪の経済力を江戸に持ち込もうとして鴻池・北風の力を削ごうと画策する田沼意次の策謀を軸として、智子内親王(後の女性天皇後桜町)をめぐる皇室事情や朝鮮とも関係する北風の娘菊姫の驚くべき生い立ちなどを絡めて、恋あり、サスペンスありの物語が展開…

エイジ/重松清

健康優良児ならぬ「精神優良児」なんて言われる中学2年生のエイジ。すぐ前に座っていた同級生タカやんが通り魔として捕まった。 通り魔になる、キレるってほんの紙一重なのではないか。 ぼくはタカやんじゃないし、タカやんもぼくじゃないけど、ぼくは、タカ…

フランキー・マシーンの冬/ドン・ウィンズロウ

今年に入って初めての小説。ドン・ウィンズロウはやはり面白い。 主人公フランキー・マシーン(黄金の腕という映画でフランク・シナトラがやったヤク中の役の名前らしい)はマフィアから足を洗って(引退して)堅気に暮らしていたが、ある日突然マフィアに命…

きのうの神さま/西川美和

1983年のほたる、ありの行列、ノミの愛情、ディア・ドクター、満月の代弁者の5編からなる短編集。僻地医療の取材をもとに書かれたもの。といっても、ディア・ドクターにしても医療というよりは、医者の父とその息子の関係を描く物語で、僻地医療の問題点を抉…

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ/ジョン・ル・カレ

スパイ小説の最高峰とも言われるということで。007みたいなものを期待すると読めないだろう。 ナイロビの蜂もそうだったが、エンタメとしては読みにくい。これは多分翻訳のせいではないな。 ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文…

酔郷譚/倉橋由美子

サントリーのPR誌に連載されていたものということで、異界のバーテンダー九鬼さんの作るカクテルがきっかけとなる連作短編は、幻想的で、奇怪で、官能的。カクテルグラスを片手に、ゆったりと読みたい。 解説は松浦寿輝。 完本 酔郷譚 (河出文庫)作者: 倉橋…

燃焼のための習作/堀江敏幸

枕木探偵事務所に、熊埜御堂さんが依頼人として現われ、助手の郷子さんを交えて、雷雨に降り込められた中、延々と、いったりきたりしながら話をする。枕木さんの話し方が「スイッチバック」みたいだと言うのは郷子さんだが、この物語自体もそんな感じ。 この…

ダブル・ジョーカー/柳広司

ジョーカーシリーズの第2弾。まあ、もう十分かな。 ダブル・ジョーカー (角川文庫)作者: 柳広司出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/06/22メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 10回この商品を含むブログ (18件) を見る

ゆれる/西川美和

ガソリンスタンドを経営する早川勇と弁護士のその弟修の関係は、GSを継いだ勇の息子稔とカメラマン猛との関係にそのまま引き継がれたということなのだなあ。その4人の独白で綴られる智恵子の転落死の真相がゆれる…というミステリー的なプロットに乗せて、そ…

権現の踊り子/町田康

99年から03年に発表された短編をまとめたもの。川端康成文学賞受賞*1の表題作のほか、「鶴の壺」「矢細君のストーン」「工夫の減さん」「ふくみ笑い」「逆水戸」。 ドツボへドツボへとはまっていくのですね…。 この短篇の続きかとまごう玄侑宗久の解説も楽し…

利休にたずねよ/山本兼一

端正な。史実から空想を膨らませる優れた歴史小説の典型のような小説。 利休が秀吉に見せることも拒む「緑釉の香合」の印象的なラスト…直木賞選考に当たって何人かの選考委員が言及している。→直木賞受賞 利休にたずねよ (PHP文芸文庫)作者: 山本兼一出版社/…

悼む人/天童荒太

主人公静人は、死者を「悼む人」(悼むというのは、死者が愛し、愛されたこと、感謝されたことをいつまでも忘れないこと)なのだが、彼が悼む人は、家族とか本人と何らかの関係のあった人に限らない。「死者」の方からみると、全く関係のない知らない人に悼ま…

地獄の季節/ランボオ

小林秀雄訳。1938年初版。 悲しい哉、私には、良さが全くわからない。 地獄の季節 (岩波文庫)作者: ランボオ,J.N.A. Rimbaud,小林秀雄出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1970/09メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 36回この商品を含むブログ (57件) を見る

月のしずく/浅田次郎

96〜97年、鉄道員と前後して書かれた人情もの短編集。 表題作月のしずく 辰夫 聖夜の肖像 純一郎 銀色の雨 章次 琉璃想 西岡 花や今宵 芳男 ふくちゃんのジャック・ナイフ ふくちゃん ピエタ ミスター・リー それぞれ、まあドラマでしかちょっとお目にかかれ…

鉄塔家族/佐伯一麦

アスベストによる喘息、鬱病として時に現れる自身の幼少期のトラウマ、神経症的な前妻との間の子供の家出などの厄介ごとを抱えつつも、草花を愛で鳥の声に聞き入り、暖かい隣人に囲まれて穏やかに暮らす。そんな私小説。 鉄塔家族 上 (朝日文庫 さ 32-2)作者…

ブラフマンの埋葬/小川洋子

奥泉光の解説以上に言うところなし。 ブラフマンは、子犬のようでありながら、水掻きを使って水へ深く潜水したりする生き物であり、全編に漂う不可思議な雰囲気の中核をなすのだけれど、それ以上に、名前のない人間たちこそ(…)謎めいている。誰より、主人公…

サクリファイス/近藤史恵

ちょいとネタばれ注意。 自転車ロードレースでは、チームのエースの勝利という観点から自己犠牲を求められる「アシスト」と呼ばれるポジションがある(主人公白石はこのポジション)。一方、レースに仕組まれた陰謀に、自己犠牲の精神を発揮するのは、「エー…

イワン・デニーソヴィチの一日/ソルジェニーツィン

シベリア収容所での一日を体験に基づいて淡々と描いている。 日本人のシベリア抑留について 収容所(ラーゲリ)から来た遺書/辺見じゅん 不毛地帯/山崎豊子 夢顔さんによろしく/西木正明 といった本を読んだ後では、なんだかあまりに淡々としていて、明るささ…

ガラスの動物園/テネシー・ウィリアムズ

訳者小田島雄志が解説で書いているように、「ウィンフィールド一家が家族としていわば普遍性をおびている」「家族というものが、外なる現実社会にたいしてはおたがいに寄りそうと同時に、家族内部においてはそれぞれが究極的には孤独であることを思い当たら…

街の灯/北村薫

とんでもなく久しぶりに北村薫。ベッキーさんシリーズの第1作。「虚栄の市」「銀座八丁」そして表題作3編の連作短編。昭和初期の上流階級の風俗が楽しい。 何が謎って、ベッキーさんが魅力的ななぞだわな。 街の灯 (文春文庫)作者: 北村薫出版社/メーカー: …