HONMEMO

読書備忘録です。

学術・教養

2100年の世界地図/峯陽一

2100年、人口で4割づつを占めるアジア、アフリカ=アフラシアは、否が応にもその存在感を増す。アフラシアは、西欧植民地支配を受けていた地域であるが、その内部に覇権的振る舞いを懸念される大国がいくつかある(中国、インド、日本、ナイジェリア、エジプト…

古事記 100分で名著/三浦佑之

古事記は、日本書紀と異なり、ヤマト政権の正統性を示すために編まれたものではない。 古事記には、北方系(弥生系)の神話要素もあるが、南方系(縄文系)の民俗や文化要素が濃厚。出雲神話は日本書紀ではわずかしか取り上げられない。 古事記は、聖徳太子が律…

日本の近代とは何であったのか/三谷太一郎

英国ジャーナリスト、バジョットの「近代」概念に照らして、日本の近代の特質を明らかにしようとするもの。 すなわち、東アジアで独自の「議論による統治」を創出し、「貿易」=資本主義化を進めて「植民地化」による帝国を出現させた日本の「近代」の意味を…

民主主義は不可能なのか/宮台真司・苅部直・渡辺靖

宮台、苅部、渡辺による「週間読書人」での2009〜2018年の年末回顧鼎談。民主主義など政治、社会、経済思想的観点からの時事評論と書評。 ・トクヴィル「多数派の専制」 個人が孤独化・原子化していくと小さなコミュニティに依拠できなくなり、見えない権力…

"意識高い系"がハマるニセ医学が危ない!/桑満おさむ

表紙がおちゃらけているが、中身はまとも。 問題なのは、著者も指摘するとおり、この手の本は読むべき人が手に取らないこと。また、手に取っても考えを変えようとしないばかりか、自らの考え方に周囲を同調させようとすること。 本人が困るだけならいいが、…

韓国 内なる分断/池畑修平

韓国の政治は、北朝鮮との分断という歴史を背景に、国内的にも保守派と進歩派に分断され、厳しく対立するという状況が規定している(南南葛藤)。 分断は、帝王的大統領制度と幅広い政治任用が助長している面があり、「大統領選挙の翌日から次の選挙を睨んだ権…

東大留学生ディオンが見たニッポン/ディオン・ン・ジェ・ティン

シンガポールからの東大留学生による体験的言語論・コミュニケーション論・ニッポン論。 ジュニア新書らしい、ティーンに読んで欲しい書。 ・今の日本では出る杭は打たれる。→多様性が拡大すれば(多様性の認識が深まれば)杭が出ているかどうかは重要でなくな…

見えない戦争/田中均

ポピュリズムから、情報を的確に収集・分析・評価して「大きな絵」を描くプロフェッショナリズムへの回帰を主張する憂国のパンフレット。 著者が携わってきた対米国、中国、韓国、北朝鮮外交について、著者の考える大きな絵をザックリ知ることができる。 見…

世界地図を読み直す/北岡伸一

JICA理事長として訪れた国々について、その国情を紹介しつつ、国際協力、外交のあり方について考察したもの。 南スーダンで国民スポーツ大会を開くとか、法整備を支援するとか、協力にもいろいろある。 世界地図を読み直す:協力と均衡の地政学 (新潮選書) 作…

日本社会のしくみ/小熊英二

雇用慣行を中心とする日本の社会の成り立ちの分析。以下備忘メモ。 日本社会は、大企業型、地元型、残余型の3類型でできている。 大企業型は、正社員、終身雇用といういわゆる日本型雇用。日本社会の3割。 地元型は、地元から離れない、農業、自営業など。社…

プログレッシブキャピタリズム/ジョセフ・E・スティグリッツ

アメリカ経済についての提言。グローバリズム、市場支配力の問題、政府の重要性など。トランプになってますますだけれど、アメリカってのはなかなか特殊な国。 経済がグローバル化しているだけに、アメリカが本書の提言を容れたような政策に転換すると、日本…

反知性主義/森本あんり

アメリカで理解しにくいものは、テレビ伝道師の絶大な人気と医療保険や銃規制にすら反対する政府不信だ。これらはアメリカという国の成り立ちと深い関係がありそうだということがわかる。 本書の主題は、アメリカのキリスト教を背景として生まれた反知性主義…

美学校1969-2019/美学校編

この学校のことは全く知らなかった。初年度の講師陣に赤瀬川原平、澁澤龍彦、巌谷國士、唐十郎、種村季弘、埴谷雄高らがいたというのはおどろくばかり。会田誠、Chim↑Pomらも講師を務めている。他にも恐らくはわたしが知らないだけであろうこの方面で有名な…

「家族の幸せ」の経済学/山口慎太郎

経済学とは、「人々がなぜ・どのように意思決定し、行動に移すのかについて考える学問」であるので、結婚、出産、子育て、家族の幸せも対象となる。カネに関係なくとも。そうなんだ。 結構当たり前じゃないかということが多いのだが(もちろん、へえ〜と思う…

暴走する日本軍兵士/ダニ・オルバフ

著者はイスラエルの若手研究者。明治以来(維新、佐賀の乱からニニ六事件まで)の日本軍軍人の不服従の歴史を英語で書いたものは、本書が初めての試みであるという。ただ、日本人にとっては、大枠で常識的な内容なのではないかな。 暴走する日本軍兵士 帝国を…

作家と楽しむ古典(5)/松浦寿輝ほか

松尾芭蕉ー松浦寿輝 与謝蕪村ー辻原登 小林一茶ー長谷川櫂 近現代俳句ー小澤實 近現代詩ー池澤夏樹 作家と楽しむ古典シリーズの第5巻 奥の細道は、歌枕を訪ねる旅。古今和歌集や新古今和歌集が芭蕉に旅され、詠まれることで、その土地には文学的な記憶が再充…

作家と楽しむ古典(2)/堀江敏幸ほか

土左日記ー堀江敏幸 堤中納言物語ー中島京子 枕草子ー酒井順子 方丈記ー高橋源一郎 徒然草ー内田樹 池澤夏樹監修の日本文学全集で古典の現代語訳を担当した人が行った「連続古典講義」をまとめたものの第2巻。 翻訳というのは、単に言葉を置き換えることでは…

日本で1日に起きていることを調べてみた/宇田川勝司

「1日という時間を尺度にした数字に表してみることで、現代日本の意外な側面や驚きの事実が浮かび上がってくる!」とのこと。意外と思ったり、驚いたりというのは人それぞれであろうとは思うけれど、数字の根拠が明示されておらず、びっくりしていいのかどう…

古典を読んでみましょう/橋本治

この辺は、橋本治の独擅場。 古典はなぜ読めないのか。 理由は、①意味がわからない言葉が多い②旧仮名遣い③文語体 古典には、公文としての漢文(あるいはその流れをくむ漢文脈の文章)と、物語に代表される和文脈の文章が並存する。特に和文脈の文章は、論理的…

八九六四/安田峰俊

天安門事件はその後どのような影響を人々にもたらしたか。王丹、ウーアルカイシのようなリーダーから非知識人の参加者、当時は生まれていない香港民主化活動家まで、多様な人々に対するインタビュー。転向して中国の現状をやむを得ないと考える者、引き続き…

生きづらい明治社会/松沢裕作

・ 負債農民騒擾は、地租改正により「村請制」が廃止されたにもかかわらず、農民が江戸時代の慣習に基づいて、借金返済猶予、土地の買戻し権の容認などの配慮を求めたことにより生じた。 ・ 現代の貧困層に対する冷たい視線は、明治期に遡る。貧民窟に暮らす…

日本進化論/落合陽一

キーワードは、ポリテック。テクノロジーに対するオプティミスティックな態度を若者の特権などと言わず、頭の固い政治の世界が認めていく必要。この本の軽やかな作り(なんとはなしにチャラチャラした感じの作り)自体が明るい未来を垣間見せるようにさえ思う…

独ソ戦/大木毅

ドイツの対ソ戦は、戦争目的を達成したのちに講和で集結するようなものでなく、人種主義に基づく社会秩序の改変と収奪による植民地帝国の建設を目指す「世界観戦争」であり、かつ(それ故に)敵の生命を組織的に奪っていく「絶滅戦争」であった。また、ドイツ…

傍らにいた人/堀江敏幸

「ひとつの文芸作品を読んで記憶の奥底に刻まれるのは、物語の筋とは一見関わりのなさそうな細部である」と。60を超える作品を連想ゲームのようにして取り上げて、その細部を愛おしむ。そのようにして指摘されないと意識することなく読み飛ばす凡人は、堀江…

リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください/井上達夫

-リベラリズムは、寛容と啓蒙の2つの流れから生まれたが、そのそれぞれのポジを統合させる規範的理念が正義。正義がリベラリズムの核心。 -どの正義構想も持つべき正義概念の規範的実質は、「普遍化不可能な差別の排除」にある。これは、反転可能性テストに…

ヘンな日本美術史/山口晃

-鳥獣戯画 4巻の構成の妙で見ると味わい深い。わざとふにゃっとちょろまかすように書くのが日本の絵の特徴。筆致に宿るものに重きがある。 -白描画 字が擬人化され、人が擬デザイン化される。紙の白がそのまま絵画の中の空間になる。白を残して描く印象派に…

人口減少時代の土地問題/吉原祥子

土地は公共性の高いものでありながら、強い所有権、対抗要件としての登記制度、進まない地籍調査などで、所有者不明の土地が増加している。 最近、法律ができたはずと思って調べたら、本書が出た直後から著者も委員になって審議会での検討が始まり、昨年、所…

名作うしろ読み/斎藤美奈子

毒舌、イヤミに安定感 名作うしろ読み (中公文庫) 作者: 斎藤美奈子 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2016/01/21 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る

食の実験場アメリカ/鈴木透

新書なので総花的な上滑りなものになってしまってるのかもしれないが、分析、評価が雑な気がする。 消化不良。 食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ (中公新書) 作者: 鈴木透 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2019/04/19 メディア: 新書…

経済学者たちの日米開戦/牧野邦昭

有沢広巳らの参加した陸軍省戦争経済研究班(通称秋丸機関)の報告書は、 ①国策に反するため焼却しなければならないような不都合な内容のもの ②太平洋戦争の戦略立案に大いに役立つ機密情報 のいずれでもなく、ごく常識的な内容のものであり、日米開戦の回避に…