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HONMEMO

読書備忘録です。

里山資本主義/藻谷浩介・NHK広島取材班

里山資本主義とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築されたマネー資本主義の横に再構築されるお金に依存しないサブシステムであり、お金がなくても水、食料、燃料が入り続ける安全安心のネットワークを予め用意しておこうという実践であるという…

国の死に方/片山杜秀

終戦で国体は護持されたのか。そもそも国体とは何か。 水戸学の国体思想や文部省「国体の本義」は、君臣相和す世界(先祖に頭を下げる謙虚な天皇に国民が感激して心を一つにすること)が国体の根本特質であるとしており、このことからすると、象徴天皇制になっ…

葬られた王朝/梅原猛

古事記などに表れるスサノオやオオクニヌシの出雲王朝は、単なる神話か実在のものか。かつて、著者は「神々の流竄」で「大和に伝わった神話を出雲に仮託したもの」としていたが、本書では、荒神谷遺跡などの新たな考古学的発見、古事記、日本書紀などの成り…

悪の引用句辞典/鹿島茂

人間の本性 政治 経済 日本人 教育 などについて、古今東西の著名人の言葉や文章を参照して、論評するもの。かなり長い文章もあり、箴言集という感じではない。悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき (中公新書)作者: 鹿島茂出…

不愉快な現実/孫崎亨

中国は経済・軍事両面で米国と肩を並べる大国になる。 米国は、中国を最も重要な国と位置づける。 日本は軍事的に中国に対抗し得ない。 米国が日本を守るために中国と軍事的に対決することはない。 という現状認識の下で、紛争を防止、解決し、安全を確保し…

植物はすごい/田中修

食べられないために、病気にならないために、紫外線、暑さ、寒さに負けないように、子孫を残していくために、植物は様々な不思議な仕組みをもっている。 そこはかとなくユーモアも漂い、楽しくすごさを実感できる。少年少女にもおすすめ。植物はすごい - 生…

経済学の犯罪/佐伯啓思

グローバル金融資本主義批判の書。 "今日のグローバル世界の構造的な矛盾をもたらしているものは、…発展段階と文化や社会構造が異なった多様な国々が、まったく同一の画一化された世界に投げ込まれて競争にさらされているという点にある。" すなわち、"各国…

戦争の条件/藤原帰一

本書の結びにあるように、国際問題は、教育問題と同様、素人がテキトーに(知識、分析、経験に基づかずに)発言できる領域であるが、すっきりした意見や議論で理解できるものではない*1。本書は、そんな難しい(答えのない)国際問題、国際政治を考える際の考え…

ゆるく考えよう/ちきりん

著者のブログは、たまにのぞいていた。本書もそうだが、その視点になるほどと思わせるところが、結構ある。 自己啓発本を読むことを批判する「自己啓発本」というのも、ユニークだわな。ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法作者: ちきりん出版社/…

科学者の卵たちに贈る言葉/笠井献一

我が国生命科学の第一人者(先頃読んだ本の著者中村桂子の師)江上不二夫の言葉、人となりを弟子筋にあたる著者が噛み砕いて伝えようとするいわば「伝道」の書。 昨今、役に立つこと(特に短期的に経済効果が見込まれること)ばかりが求められているように思…

都市の誕生/P・D・スミス

時代を超えて、地域・文化を超えて、様々なキーワードで都市を縦覧する。面白いエピソードの紹介(カエサルは、渋滞対策のため、荷車の日中の往来を禁止し、市民に迷惑がられたとか)もあるものの、全体として焦点が定まらない、評論とエッセイの間のような文…

科学者が人間であること/中村桂子

筆者は、我が国生命科学の第一人者、JT生命誌研究館館長。 「人間は生きものであり、自然の中にある。」という認識を共有することによって、近代文明を見直し、新しい社会づくりを進めようとする提言。 こういう考え方って、広く表層的な共感は得られるのだ…

色好みの構造/中村真一郎

「色好み」の理念とその変遷を平安朝文学を通じて探る。 光源氏の色好みは、現代人からみれば色情狂だが、源氏物語は、当時、空想の物語ではなく、風俗小説すなわち実生活の反映としてよまれた。むしろ、一人の女に一途に忠実な恋心を抱く男は、一種の病人、…

世界史/ウィリアム・H・マクニール

人類史をコンパクトにまとめている。教科書だと出来事、キーワードをなるべく盛り込もうとするためか、なぜそうなったのかがわかりにくいといううらみなしとしないが、本書はむしろそういうところに重点があるので、教科書と併せて読むといいだろう。世界史 …

神奈川県謎解き散歩/小市和雄

神奈川の歴史・地理・文化の小ネタを集めたものだが、編集が安直・粗雑なためか、つまらない。神奈川県 謎解き散歩 (新人物往来社文庫)作者: 小市和雄出版社/メーカー: 新人物往来社発売日: 2011/07/08メディア: 文庫 クリック: 20回この商品を含むブログを…

日本の宿命/佐伯啓思

日本の戦後、近代化過程を論じる後半より、民主主義、政治過程に関する第3章までが面白い。 第1章「橋下現象」のイヤな感じの概略をメモ 民主主義には、議会制や政党政治、官僚制などと調和しつつ政治をすすめるという間接的で抑制的な民主政治と、国民の意…

古池に蛙は飛び込んだか/長谷川櫂

古池の句は、「古池に蛙が飛び込んで水の音がした」という写生の句ではなく、芭蕉は、蛙が水に飛び込む音を聞いて、心の空間に浮かぶ古池を目の当たりにした。この心の世界が開けたことが、蕉風開眼の句と言われるゆえんだと。俳句はやはりなかなか深い。古…

キレイゴトぬきの農業論/久松達央

著者は、茨城県で脱サラして野菜を有機農法で栽培しているが、有機農法を採用しているのは、有機農業が「安全」「美味しい」「環境にいい」というのはウソ(神話)であると認識した上で、有機農法が栽培時期(旬)、品種、鮮度という「野菜の美味しさの三要素」…

日本農業の真実/生源寺眞一

著者は政府の審議会委員なども務める学者。 自給率、担い手、生産調整などについて、その問題点、経緯、あるべき方向をわかりやすく解説している。手軽な基本書と言えるのでは? 著者の基本的な考え方が表れている部分を少しだけ抜粋。 逆走、迷走の農政から…

亡国農政の終焉/山下一仁

著者は元農水省キャリア官僚。農政批判の中心は、農水省、農協、族議員という農政トライアングルが農業者、消費者のためであるべき農政を歪めてきたという点にある。 そして民主党農政が農協を退出させた後の農政大転換に期待している。著者の提案は、ウルグ…

日本は世界5位の農業大国/浅川芳裕

生産調整の廃止など農業がいろいろ話題になっているので、ブックオフで新書を何冊か買ってみた。そのうちの1冊。 本書は、農水省を叩いて溜飲を下げたいという人以外にはおすすめできない。バイアスがかかり過ぎていて、部分的になるほどと思うような指摘も…

鳥類学者無謀にも恐竜を語る/川上和人

恐竜は絶滅しているだけに、その色は?声は?歩き方は?など基本的なことも最終的には想像するしかないようなところがあるが、そのようなことを鳥類との緊密な類縁関係をもとにして考察する。 内容も興味深いが、ぶっ飛んだユーモアあふれる筆致が最高。図書…

古代から来た未来人折口信夫/中沢新一

中沢新一による折口信夫入門。事前に本書を読んでいたら、難解な死者の書も少しは理解できていたかも。古代から来た未来人 折口信夫 (ちくまプリマー新書)作者: 中沢新一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/05メディア: 新書購入: 3人 クリック: 17回こ…

「レ・ミゼラブル」百六景/鹿島茂

レ・ミゼラブルは読まれざる名作だという。私も中学の時に旺文社文庫の縮約版で読んで、フランス革命といった社会情勢などについての詳細な記述が省略されていることは知っていたけれど、それで可とし、読んだ気になっている。 本書は、230の挿絵に内容の要…

「上から目線」の時代/冷泉彰彦

「上から目線」が問題とされる時代になったとか、価値観の多様化、困難な時代の中で会話のテンプレートが失われたとか、日本語の構造と上から目線の関係とか、私にはなんだか論旨がもう一つストンと了解されなくて、なんだか。 「上から目線」の時代 (講談社…

慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り/坪内祐三

夏目漱石、宮武外骨、南方熊楠、幸田露伴、正岡子規、尾崎紅葉、斎藤緑雨*1の7人は慶応3年生まれ(翌年が明治元年)。豪華メンバーの歩みを、時代背景と共に描く。面白すぎ。日清戦争直前までで終わったのが残念。 子規の新聞小説「一日物語」の謎の女は、…

世界を知る力 日本創生編/寺島実郎

3・11直後に書かれた「世界を知る力」の続編。親鸞の他力本願とは、3・11のような圧倒的現実に直面し人間の無力を自覚してはじめて腑に落ちるものであり、また自力でとことん努力を積み上げたうえで了解されるもの。今や痛烈な反省の意識をもって近代主義、…

デザインのデザイン/原研哉

2003年上梓、手元のものは09年23版というからロングセラー、先ごろ読んだ「日本のデザイン」の先行著作。デザイン論であり、日本論。 「これがいい」でなく、「これでいい」のレベルをできるだけ高くすることが重要。 日本人の持つ自己を世界の中心と考えず…

古事記/梅原猛

梅原猛による古事記の現代語訳。若干の解説と短い「古事記論」というおまけつき。やはり、おまけの部分が面白く、このあたりのまとまった論文があるなら読んでみたい。 古事記 増補新版 (学研M文庫)作者: 梅原猛出版社/メーカー: 学研パブリッシング発売日: …

日本の難点/宮台真司

厭味なというか正直なというか、好きになれない文体ではあるけれど、共感できる点も結構ある。 「米国からの要求(日米構造協議)に応じた結果、日本の<生活世界>の相互扶助で調達されていた便益が、流通業という<システム>にすっかり置き換えられ、個人…

近代秀歌/永田和宏

著者は、細胞生物学者であり、歌人・朝日歌壇の撰者。近代の短歌のうち「日本人なら、せめてこれくらいの歌は知っていて欲しいというぎりぎりの百首」の鑑賞。岩波新書第1号は茂吉の「万葉秀歌」だそうだが、本書は、同様ロングセラーとなる名著だと思う。「…

八月の砲声/バーバラ・タックマン

第一次世界大戦勃発直前から、当初のドイツ軍の西部戦線での破竹の勢いを食い止めたマルヌの会戦まで(日本軍部にも大きな影響を与えたという東部戦線のタンネンベルクの戦いも含む。)を描くピュリッツァー賞受賞の「戦記」。 今から見ると情報伝達手段が限…

日米交換船/鶴見俊輔、加藤典洋、黒川創

太平洋戦争開戦後、日米間で、それぞれ相手国に暮らす人々を交換する船が仕立てられた。第一次交換船で帰国した1500人ほどの中に、来栖三郎、野村吉三郎ら外交官のほかに、ビジネスマン・研究者、学生などが乗船しており、鶴見俊輔もその中にいた。 本書は、…

北欧モデル/翁百合、西沢和彦、山田久、湯本健治

高負担高福祉の北欧型社会モデルの優位性は、リーマンショック後の経済成長や財政の健全性などからみても明らかであるが、状況の異なる日本にその仕組みをそのまま導入できるわけではなく、むしろ参考になるのは、ユニークなモデルを構築し、実行してきたプ…

宗教を生みだす本能/ニコラス・ウェイド

道徳的直観というものが生得的なもの(本能)であるというのは論拠がもう一つしっくりこないけれど、まあ直感的にそうなのかなと思う。一方、宗教行動が集団選択(淘汰)の結果としての進化した行動なのだというのは、原始社会の信仰(儀礼、音楽、舞踏など…

おどろきの中国/橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司

これからの日中関係(日韓もそうだが)を考える上で、宮台真司の言う「溜飲厨」「承認厨」の弊に陥ることのないよう改めて自らを戒めたい。 いくつか気づきの点をメモ。 中国の社会組織の原則 1.自分は正しくて立派(自己主張が強い) 2.他者も自己主張…

重金属のはなし/渡邉泉

重金属におる健康被害について、水銀による中国皇帝らの早逝、あるいは白粉(おしろい)の鉛被害などは聞いたことがあったが、ローマ人がワインの貯蔵に鉛製品を使用すると味がマイルドになること(鉛糖)を発見したことで、帝国を滅ぼしたのではないかとい…

ファスト&スロー/ダニエル・カーネマン

心理学、行動経済学の古典となるであろう一冊。実験事例も多数掲載されていて、楽しく読める。 合理的経済主体(エコン)を前提とするリバタリアンに対し、「ヒューマン」を前提とする行動経済学者セイラーらはリバタリアン・パターナリズムの立場をとる。リ…

創られた「日本の心」神話/輪島裕介

副題は、「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史。 「演歌」とは、「日本固有」の「伝統的」な表現ジャンルではなく、昭和40年代以降、レコード歌謡の製作スタイルの大転換の過程で「時代遅れ」とみなされるようになった古いタイプのレコード歌謡を「演歌」と呼んだ…

選択の科学/シーナ・アイエンガー

選択は生物の本能で、自己決定権を奪われるとストレスが高まる。動物園の動物は早死に、社長は長生き。 選択は、環境を自分の力で変える能力のことであり、第一に「自分の力で変えられる」という「認識」を持つことが重要。 自己決定感は、その人の属する集…

世界が土曜の夜の夢なら/斉藤環

副題は、ヤンキーと精神分析。「ヤンキー的なもの」は実は思いのほか広く世間一般に浸透している。冒頭取り上げられる天皇即位20年の奉祝曲をEXILEが披露したというのは、まさに象徴的なのだけれど、TV、音楽などがヤンキー的なものにあふれているのはなんで…

日本のデザイン/原研哉

デザインとは、…ものを介して暮らしや環境の本質を考える生活の思想でもある。 とする著者の思想を語るもの。 日本の美意識の真ん中あたりにある「簡素さ」はシンプルというよりエンプティネスである。 日本の美意識の核心は、繊細、丁寧、緻密、簡潔を旨と…

東大のディープな日本史/相澤理

東大の日本史の入試問題を材料にして、日本史を語る本。東大の入試問題を茶化すか、揚げ足をとるかする本だろうと思っていたら、ほぼ絶賛というスタンスに立っていて、ちょっとびっくりしたが、実際、取り上げられる入試問題は、それぞれの時代の社会や政治…

あの日からの建築/伊藤豊雄

「みんなの家」でヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞したということで、著者のことを知って、いつだったか、乃木坂にみんなの家のプロジェクトの展示を見に行った。 建築家は、自治体や住民と対峙することが多く、震災復興の過程でも建築家が呼ばれるこ…

日本の七十二候を楽しむ/白井明大

二十四節気は知っていたが、七十二候というのは知らなかった。 今日6月8日頃は、二十四節気「芒種」(これも恥ずかしながら初耳)、七十二候では「蟷螂生ず」だそう。 おれの こころも かまも どきどきするほど ひかってるぜ (工藤直子) 旬の魚介としてあ…

脳はなにかと言い訳する/池谷裕二

ちょっと前のベストセラーの文庫化。脳ものは人気なのかな。小ネタが盛りだくさん。 「作業興奮」 やる気がなくてもまず始めてみると、次第に脳が活性化し、やる気が出てくる。 「変化盲」 思い込みにより変化に気が付かないことがある。 「恒常性維持本能」…

中国と茶碗と日本と/彭丹

著者は、四川省出身の法政大学講師で、日中比較文化・比較文学を研究。日本の茶碗をめぐって、 中国では雑器である珠光青磁茶碗が日本でなぜ珍重されるのか。 曜変(窯変)天目茶碗はなぜ日本にしか残っていないのか。 日本ではなぜ龍文が使われないのか。 …

子供のための哲学対話/永井均

ダイニングテーブルに転がっていたので、サラッと読む。ちょっとだけメモ。 人間は何のために生きているのか →なんのためにでもなく生きる~ただ存在するだけで満ち足りているということ 人間は自分のことをわかってくれる人なんかいなくても生きていけるっ…

物語イスラエルの歴史/高橋正男

何というか、出来事を順番に並べただけみたいな味気ない文章で、また変に細かいところにこだわりがあったりで読みにくく、大局的に歴史を捉えようとする人には向かないだろう。 物語 イスラエルの歴史―アブラハムから中東戦争へ (中公新書)作者: 高橋正男出…

いつだって大変な時代/堀井憲一郎

いつでも「大変な時代だ」と言うのは、それを超克していく自分たちを偉く感じることができるためで、危険であると。政治家がどんなときでも「わが国は危機的状況にある」と言うのに違和感を感じていたが、そういうことなのだな。 ちょっとメモ。 歴史は繰り…