HONMEMO

読書備忘録です。

学術・教養

2030年中国ビジネスの未来地図/チョウ・イーリン

これからの不動産市況なども含めてのママクロ経済の行方とその影響とかも含めての近未来予測を期待していたこともあって、最新の消費トレンドと企業の対応といったあたりがメインとなっている本書は、期待はずれ。ズレた期待をする方が悪いけど、ここで書か…

思考停止社会ニッポン/苅谷剛彦

コロナ禍で言われた「自粛」という言葉には、戦時下など過去の経験が知識として社会認識に加わり、自粛の要請といった妙な表現につながっている。自粛による行動統制は成功体験となったが、この体験が、同調圧力といった言葉で納得、思考停止してしまう日本…

コロナ後の世界を生きる/村上陽一郎編

2020年7月初版というコロナ禍の衝撃冷めやらぬ、先の見えない状況(初めての緊急事態宣言解除が5月25日、7月下旬から第2波)で上梓されたもの。もっと最近のものと思って借り出したのだが。 24人の提言が掲載されているが、印象に残った提言などをメモ。 村上…

核戦争、どうする日本?/橋爪大三郎

中国は台湾に必ず侵攻する。ただ、中国は失敗した時のリスクの大きさも理解している。戦力バランスは次第に中国に有利になることなどから、中国は急いで開戦する必要もないが、タイミングを計っている(いつ侵攻してもおかしくない)。 台湾有事は周辺事態であ…

歴史のダイヤグラム/原武史

副題は鉄道に見る日本近現代史。鉄道ファンである著者の個人史的なものも含まれているが、初出が朝日新聞日曜版に掲載されたコラムということで、肩肘張らないちょっと気の利いた読み物になっている。 72年の浅間山荘事件で政治の季節は終わったとも言われる…

ニッポン美食立国論/柏原光太郎

人口減必至の日本の内需を支える観点からも観光立国が唱えられ、オーバーツーリズムの弊害などから団体客より富裕層をいかに呼び込むかが課題とされている。 本書のいう美食立国は、これを食の観点から進めようというもの。フーディーと言われる美食オタクの…

客観性の落とし穴/村上靖彦

本書の帯やキャッチコピーは、ややミスリーディング。ポイントは一人一人の経験、声から社会を、制度を作っていくことの重要性を説くもの。 科学の進展に伴い、客観性、数値に価値が置かれることにより、人間の序列化が進み、差別、排除の問題を生んでいる。…

出世と恋愛/斎藤美奈子

斎藤美奈子の文芸批評は、切り口/補助線の引き方や見立ての面白さと歯に衣着せぬ語り口で毎度楽しめる。本書でも、まあ上品とは言いかねるけれど、啖呵の切れ味は見事だ。 青春小説(立身出世小説)の王道は「告白できない男たち」、恋愛小説の王道は「死に急…

新しい世界の資源地図/ダニエル・ヤーギン

国際政治の地図は、経済、安全保障などはもとよりだが、(それとも関連して)エネルギーをめぐる情勢からも大きな影響を受けて変化してきた。石油、天然ガス、シェール、原子力などを巡る、米国、ロシア、中国、中東のパワーポリティクス(ゲオポリティクス)の…

一般意志2.0/東浩紀

これも成田悠介「22世紀の民主主義」を読んだ流れで。同書は、「無意識民主主義」によって政治家はネコになるというが、本書は、総記録化により形成される大衆の欲望、無意識=一般意志2.0を可視化し、政治における熟議を制約するシステムを構想する。 具体的…

ギフテッドの光と影/阿部朋美・伊藤和行

日本は平等主義、同調圧力が強く、ダイバーシティについての理解も全く進んでいない。このような土壌の下で公教育においてギフテッドの才能を伸ばす英才教育を行うことは本書も指摘するとおり問題が多いだろう。まずはダイバーシティについての肌感覚を向上…

なめらかな社会とその敵/鈴木健

著者は複雑系科学の研究者。成田悠介「22世紀の民主主義」を読んだ流れで、手に取ってみた。 生物の基本単位である細胞の膜と核の構造は社会制度と地続き(国家と中央集権権力)であるが、その背景にある反応ネットワーク(インターネットなど)によってその膜の…

「正しい戦争」は本当にあるのか/藤原帰一

再読。本はあらかた処分し、図書館に依存するようになったのだが、本書は書棚に残っていた。 戦争と平和の捉え方には大きく3つある。 悪い奴(ナチ、フセインなど)を倒すことにより平和をつくる。これは正しい戦争。 正義などなく、各国が脅し合って均衡状態…

22世紀の民主主義/成田悠輔

インターネットやSNSの浸透に伴って、分配・包摂の民主主義は劣化、「偽善的リベラリズムと露悪的ポピュリズムのジェットコースター」となり、成長・占有の資本主義が加速している。しかも、民主主義国家の経済パフォーマンスは権威主義諸国より悪い。 情報…

「低学歴国」ニッポン/日本経済新聞社編

教育の問題をさまざまな角度から取り上げている。 官僚養成機関だった東大から官僚を目指す人が減っている。大沢法学部長は、「学生の公共心は健在。ただ、現在では昔と違い、公共に関わる分野が民間を含む色々な方面に広がっている。進路の選択肢も増えた」…

生物学的に、しょうがない!/石川幹人

途中から斜め読み。何でこの本を借りたんだったか? 生物学的に、しょうがない! 作者:石川 幹人 サンマーク出版 Amazon

田中耕太郎/牧原出

東京帝国大学法学部長、文部大臣、参議院文教委員長、最高裁判所長官、国際司法裁判所判事を歴任した田中耕太郎の人物評伝。 田中は、論敵を強烈に批判し、明快に自らの価値に基づく意見を主張しつつ、状況に応じた対応をする。このことによって組織内で反対…

全体主義の克服/マルクス・ガブリエル 中島隆博

日独哲学者の対談。 全体主義は、私的な領域を公的な領域に置き換えていくが、現在の全体主義は、国家ではなくGAFAが公的な領域と私的な領域の境界を破壊している。トランプにせよ、プーチン、習近平にせよ民主的に選出されており、20世紀的定義でいえば中国…

先生、どうか皆の前でほめないで下さい/金間大介

今の若者の心理・行動特性を名付けると、「いい子症候群」であると。 良くも悪くも目立つことを嫌い、横並び志向が強い。自己肯定感が低く(自信がなく)、自分で決めることができず、指示待ちで、アントレプレナーシップ気質が低く、保守的安定志向(安定した…

東大よりも世界に近い学校/日野田直彦

大阪府立箕面高校の民間校長を皮切りに、中高の校長を務め、その実績が注目されている著者による、自らの経験に基づく教育についての提言。 教育論であるとともに、親交があったという故瀧本哲史氏が憑依したかのような、若い人に向けた生き方啓発の書でもあ…

朝鮮王公族/新城道彦

日韓併合に伴う大韓帝国皇族の処遇は、王の称号などの付与や朝鮮の風習に配慮した国葬の実施など、韓国民の感情をなるべく逆撫でしないようにという日本側の配慮と韓国側の少なくとも何らか名分を取りたいという中で決まっていった。 朝鮮王公族の受け止めは…

本当の戦争の話をしよう/伊勢崎賢治

シエラレオネ、アフガニスタン、東チモール、カシミールなどでの武装解除や停戦監視の現場経験を踏まえての福島高校の生徒との対話。 紛争を解決し、平和を維持するという観点からは、正義や人権も絶対的価値ではなく、相対的なものと捉えざるを得ないのでは…

なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか/伊藤剛

本書の前に読んだ高橋源一郎「僕らの戦争なんだぜ」に続いて、戦争を伝えることについて。 タイトルはややソッポ。 そもそも平和教育とは何か?戦争体験者の話を聞いて「戦争反対」を学ぶことで足りるのか? ボスニア紛争のような内戦においては、加害者と被…

ぼくらの戦争なんだぜ/高橋源一郎

戦争を伝えるとはどういうことなのか、あるいは戦争との向き合い方についての文芸評論。多くの戦争語りがなぜつまらないのか、伝わらないのかについて、一つの納得感のある説明だと思う。 戦争が語られる時、「大きなことば」で語られる「大きな記憶としての…

アメリカとは何か/渡辺靖

現代米国の政治の分断状況と今後の見通しについての第一人者の分析。 米国は憲法によって成立した市民主体の「自立・分散・協調」を重んじるネットワーク型の統治を試みた「理念の共和国」と称される。 米国におけるリベラルとは、政府による一定の介入こそ…

世界一ポップな国際ニュースの授業/藤原帰一・石田衣良

国際政治関係の時事問題をめぐる対談。2021年1月上梓。図書館に探していた藤原帰一の本がなくて代わりに。肩肘張らない対談。 プーチンは、自分の力の限界を知っていて、一線を越えようとしない。例えば、クリミア併合は行っても、オバマがリトアニア、ポー…

異端の時代/森本あんり

正統、異端とは何かを突き詰めつつ、現代のポピュリズム、反知性主義のありようの危うさを示す。 キリスト教などでは宗教の3要素として、正典、教義、職制があるが、それらによって正統が生まれるのではなく、正統はそれに先立って成立している。 正典は、正…

日本の構造/橘木俊詔

日本の国のかたちを50の統計データで確認、解説するもの。データ1ページ、文章3ページを原作として、コンパクトにまとめてあり、全体を俯瞰するのにはこういうスタイルも便利だろう。 ・年間労働時間は、1960年頃から700時間減少、アメリカを150時間下回る1,…

政治学(ヒューマニティーズ)/苅部直

高大接続を意識した政治学(政治哲学)入門とのこと。高校教科書で、国民の政治参加により国民の意思が政治決定となるというすっきりとした構図で説明される政治は、実は肝心の「政治」そのものがすっぽりと抜け落ちている。その「政治」を考察する政治学の入…

5歳からの哲学/ベリーズ&モラグ・ゴート

小さな子供に哲学の手ほどきをすることを目的とする本だというのだが。子供が倫理をはじめさまざまなことを自分の頭で考えるようにガイドしようということはわかるものの、もう一つピンとこない。 14歳からでいいのかもね>池田晶子 5歳からの哲学 考える力を…