中国の死神「無常」とは、中国民間信仰(仏教・儒教・道教と直接は関係しない)の領域の鬼神であり、死者を鬼界へ導く勾魂使者。様々なバリエーションがあり、ユーモラスな趣もあるのだが、長い舌をダラリと垂らすなどそのビジュアルが強烈で、何やらそれだけ…
町田康の自分語り。高尚な言葉、建前の言葉と卑俗の言葉、本音の言葉。前者は欺瞞の言葉、後者は公にすると面白くなる。 詩は、わからんけどわかるもの。重大なことを書くと面白くなくなる、 文体は、その人の意思そのものであり(癖ではない)、工夫している…
ビジネスシーンなどでの活用を意識した50の哲学・思想についてのいわば箴言集。▼知らないものや認識を新たにしたものも多く、興味深く読んだ。▼このようなビジネス書が役立つかどうかは結局読者の意識次第で、私にとっては猫に小判であることは分かっていて…
世界各地の家庭に滞在して一緒に料理し、料理から見える社会や暮らしを伝える「世界の台所探検家」。 決めつけない、しなやかな考え方が、好ましい。 伝統食が政治や企業活動によって作られたイメージであることがよくある(ブルガリアヨーグルト) 安全性、文…
我が国の進化心理学の第一人者による分かりやすい概説。 昨今は、性差についての研究は、性差別の問題と密接に関連するが故に議論が感情的となり、研究自体も減少しているという。人間の性差について客観的な評価は可能であり、研究者が偏見を持っていたとし…
人々は豊かになって暇を得たが、文化産業が人々に産業に都合のいい楽しみを提供し、労働者の暇を搾取している。これは人が退屈を嫌うから。なぜ人は暇の中で退屈してしまうのか。暇の中でいかに生きるべきか、退屈とどう向き合うべきか(暇と退屈の倫理学)。 …
ジェンダー格差についての実証経済学、すなわち統計学を使って因果関係(≠相関関係)を厳密に示すエビデンスを提供する研究を紹介するもの。 因果関係の証明は結構大変で、相関関係を因果関係と見誤ってエビデンスと捉えると政策の方向性を間違えかねない。 男…
著者によると、本書は、社会システム、制度・政策論中心の「人口減少社会のデザイン」、哲学的、思想的考察中心の「無と意識の人類史」に続く、両書を架橋する書としての3部作の最終作。前2作を読んだ者には、その著者の考え方を確認し、また理解が深まるも…
学生の頃読んだような気がするが、書棚に飾っただけだったか?今回も一応読んだが、きちんと読んだとは言えない。 中世の桎梏を脱して自由を得た市民は、その孤独・無力に耐えられず、自由から権威主義(=サド/マゾ)へと逃走、ナチスを産む(乱暴なまとめ)。 …
若いJAXA研究者によるブログをもとにしたエッセイ。ワンルームでの私生活のつれづれに宇宙機制御工学や物理、天文などのエピソードを絡めた優しい文章。読んでいてこちらが赤面するようなラブレターのようなものや宇宙飛行士選抜試験に落ちた赤裸々な心情な…
タイトルはややミスリーディング。本書は、カルトに限らず宗教団体とその政治行動(信者の投票行動)の問題点を指摘するもの。主に取り上げられるのは、統一教会のほかは、生長の家/日本会議、創価学会/公明党であって、これらは著者の定義からしてカルトとは…
世界古代文明(シュメール)揺籃の地にほど近いチグリス川とユーフラテス川の合流する辺りは、アフワールと呼ばれる広大な湿地帯になっていて、騒乱のたびに人々が逃げ込むアジールでもある。今でも政府勢力の影響力が及びにくく、情報も少ない謎の地域で、安…
著名な経済学者による紀行エッセイ。友人(研究者)とともに、鉱山跡地を中心に産業遺産や名所旧跡なども含めて、全国を旅した記録(著者は温泉好きのようで、宿泊先は秘湯と言われるような温泉宿も多い)。 巻末に人名索引があるのも、本書のようなエッセイでは…
「21世紀の資本」は、"資本収益率(r)>経済成長率(g)であるため、富は資本家へ蓄積され、格差を生む。その是正のための再配分が不可欠"という程度しか知らないが、大著でもあり、読むつもりはない。楽をしてピケティの考えの一端に触れようと思って2022年…
著者は北京に長く住むライター。 最近の若者の恋愛、結婚事情を中心とした中国社会事情ルポ。 中国では経済成長もそうだが、結婚平均年齢、離婚率の上昇、少子化など社会構造も超高速・圧縮型で変化した。 貧富の差の拡大、不動産価格の高騰などの経済成長に…
北杜夫は中高時代の青春の書。 ほとんど覚えていないのだが、冒頭に置かれた「岩尾根にて」の蝿のたかる死体と自己が分裂する幻想など、ところどころ、ああそうだったとよみがえる。「夜と霧」を読んだついでにと借り出したのだが、表題作は全く覚えていなか…
今更ながら。 精神医学、心理学の古典という理解だったが、本書は人間とは、生きるとは何かということを突き詰めるいわば哲学書のようだ。 大方の収容者は、収容所を生き延びる(生きしのぐ)ことができるかということ、すなわち、生き延びられなければこのす…
アルベルゴ・ディフーゾとは分散型の宿などと訳される、地域に点在する古民家などを拠点として、自然や農村の暮らしを楽しむようなシステム(レセプションはひとつ、食事は村の食堂)又はその宿。イタリアでサント・ステファノ・ディ・セッサニオという村など…
子どもはどのようにして言語を習得していくのか。オノマトペのアイコン性、アブダクション(仮説形成)推論の連鎖、ブートストラッピングサイクルよる知識の爆発的な増加など、その機序の探求過程はエキサイティングだ。対称性推論バイアスを持ち、アブダクシ…
これからの不動産市況なども含めてのママクロ経済の行方とその影響とかも含めての近未来予測を期待していたこともあって、最新の消費トレンドと企業の対応といったあたりがメインとなっている本書は、期待はずれ。ズレた期待をする方が悪いけど、ここで書か…
コロナ禍で言われた「自粛」という言葉には、戦時下など過去の経験が知識として社会認識に加わり、自粛の要請といった妙な表現につながっている。自粛による行動統制は成功体験となったが、この体験が、同調圧力といった言葉で納得、思考停止してしまう日本…
2020年7月初版というコロナ禍の衝撃冷めやらぬ、先の見えない状況(初めての緊急事態宣言解除が5月25日、7月下旬から第2波)で上梓されたもの。もっと最近のものと思って借り出したのだが。 24人の提言が掲載されているが、印象に残った提言などをメモ。 村上…
中国は台湾に必ず侵攻する。ただ、中国は失敗した時のリスクの大きさも理解している。戦力バランスは次第に中国に有利になることなどから、中国は急いで開戦する必要もないが、タイミングを計っている(いつ侵攻してもおかしくない)。 台湾有事は周辺事態であ…
精緻な観察と想像力、そしてきめ細やかな感性とそれにふさわしい美しい言葉。上質で豊かな贅沢な時間を過ごす。しかし、本書を語るに陳腐な言葉しか出てこない我が身が悲しい。 昔ながらのコーヒーショップに置いてあったりするとすごくいい。 からだの美 (…
著者は作家でもあり、料理人でもあるようだ。いろいろなサイトを参考にしながら適宜好みにアレンジしたりしているが、料理を工夫するのは楽しいものだ。 『おいしさと美しさはよく似ている。どちらも主観的であり、客観的なものではないので、自分とあなたが…
時事評論集 突き詰めていく論考で勉強になる。 1 ロシアのウクライナ侵攻 ロシアのウクライナ侵攻の背景に、ヨーロッパに対する羨望、劣等感がある。ヨーロッパの根幹は、キリスト教の隣人愛(自由平等、博愛、民主主義)であるが、ヨーロッパの行動は、自らそ…
副題は鉄道に見る日本近現代史。鉄道ファンである著者の個人史的なものも含まれているが、初出が朝日新聞日曜版に掲載されたコラムということで、肩肘張らないちょっと気の利いた読み物になっている。 72年の浅間山荘事件で政治の季節は終わったとも言われる…
ドイツ東部(旧東独)の寂れつつある町のギムナジウムの女性生物学教師の独白的な物語。旧東独の雰囲気を引き継いでトーン全体が寒々しく印象的だ。主人公は、適者生存(キリンの首が長い理由と主人公は考えている)など生物学の持つ冷徹さを体現しているような…
人口減必至の日本の内需を支える観点からも観光立国が唱えられ、オーバーツーリズムの弊害などから団体客より富裕層をいかに呼び込むかが課題とされている。 本書のいう美食立国は、これを食の観点から進めようというもの。フーディーと言われる美食オタクの…
本書の帯やキャッチコピーは、ややミスリーディング。ポイントは一人一人の経験、声から社会を、制度を作っていくことの重要性を説くもの。 科学の進展に伴い、客観性、数値に価値が置かれることにより、人間の序列化が進み、差別、排除の問題を生んでいる。…