著名な動物行動学者によるエッセイ。一流の科学者の書く文章は素晴らしいものが多い。「自然と人間との共生」とか「生態系の調和を乱すな」といった「標語」を幻想であるとし、人間が自然の論理を潰しきってしまわない範囲内で、自然と人間の論理がせめぎあう場である「人里」を形成していこうじゃないかという考え方には大いに共感を覚える。ただこの本の良さはそういう啓蒙的な言辞にあるのではなくて(そういう文章も決して押し付けがましくない)、小さな生きとし生けるもののの不思議な営みがさらりと語られているところにあるのではないだろうか。装丁、挿絵もきれい。
文庫版解説は椎名誠。シーナさんの言うとおり、「うつくしい本」、「かしこい美人」の本だと思う。
氏の名訳で知られるコンラート・ローレンツの「ソロモンの指環」*1もいずれ読んでみたい。学生の頃ローレンツの「攻撃」*2が教養課程の推薦書だったかに上げられていて購入したけれど結局読まなかったような記憶がある。竹内久美子「そんなバカな!」*3で有名になった(といっては変か。少なくとも私はそれで知った)ドーキンス「利己的な遺伝子」*4も氏の訳で紹介されている。
- 作者: 日高敏隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/01/28
- メディア: 文庫
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