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読書備忘録です。

裏声で歌へ君が代/丸谷才一

 登場人物が、国家とは、国家と人とはを議論する場面が長々続くのだが、上滑りしている感じがする。議論される国家論が私が期待している議論とずれているためかもしれないし、20年以上前の作品で国家というものの状況もかなり違ってきていることもあるかもしれない。
 「笹まくら (新潮文庫)」では、主人公の生き方が描かれることによって自然と徴兵忌避の問題や国家とは何かということが浮かび上る(私に考えさせる)のに対して、本書では、登場人物たちの清談を聞いているような気がしてしまう。
 丸谷は女、恋愛を書くのはあまり上手ではないのではないのではないかと思ったりもするのだが、朝子ってのも何だかよく分らんし、それを追っかける主人公もなんだかよく分らない。
 といっても氏の本にハズレというものはなく、楽しませてもらいました。

裏声で歌へ君が代 (新潮文庫)

裏声で歌へ君が代 (新潮文庫)