HONMEMO

読書備忘録です。

航路/コニー・ウィリス

 長編エンターテインメントの魅力を満喫。登場人物は類型的な描かれ方なのだけれど、それぞれなかなかに魅力的。アメリカのTVコメディのような展開を楽しく読む。
 AをBのメタファーとして描く時に、AはBのメタファーだ、あるいは、AはBのようだと説明してしまったら、メタファーではなくなってしまう。この本では仕方ないのかなと思う一方、迷路のような病院(やいつも閉まっているカフェテラス)がメタファーとして描かれているのは明らかなのに途中でわざわざ説明的な文章が出てきたのは興ざめ。
 また、主人公ジョアンナが臨死体験の本質を試行錯誤して突き止めていくというのが一つの主筋になっているのだが、突き止めた臨死体験の本質ってのは、私には当たり前のもの(少なくとも第一に仮説として考えつくもの)と思えるがために、それに至る試行錯誤の過程で出てくる仮説はバカバカしく、まさかそれが臨死体験だっていうことだったらトンデモ本だぞと読みながら思い、ハラハラさせられた。そのほかにも、臨死体験(からの復帰)に関与する物質とその効果とか、なんだかスッキリしない所もあるのだが、全体としては大いに楽しめる小説だった(訳者大森望による後書きの躁状態のような絶賛まで与えられるものかとは思うが)。
 ついでながら、立花隆の「臨死体験*1」は、私にとっては「宇宙からの帰還*2」に次いで好きな著作。立花先生、オカルトに踏み出すんじゃないでしょうねとちょっと心配になったりしたものだ。

航路〈上〉 (ヴィレッジブックス)

航路〈上〉 (ヴィレッジブックス)

*1:ISBN:4167330091,ISBN:4167330105

*2:ISBN:4122012325