HONMEMO

読書備忘録です。

火の粉/雫井脩介

 【ネタバレ注意】何だかよく分らんちん、へんちくりんな本。骨格となる設定に無理があるのか、あるいはそれを無理なく説明するための伏線がいい加減なのか。
 夢中にして読ませる力のある本なのだけど、ずっとイヤ〜な感じがつきまとう。
 武内って男は何のために自分のトリックを見抜けずに無罪判決を下したマヌケな裁判長梶間の隣に引っ越したのだろう。それがわからないといところが、梶間の家族にとって不気味で怖いところなのだけれど、最後まで武内の視点で語られるところがないこともあって、結局その理由が分らない。何かのきっかけで真実がばれても困るから、裁判関係者には近づかないようにと考える方が普通だわな。恩返しをしようってことはありえないし(武内は無実でなく、冤罪を晴らしてもらったのではないのだから)。何かしらんけど自分に都合のいいことをしてくれた人と仲良くしたくなったから?嘲笑いたかったからということではなさそうだし。異常者だから、武内としても分ってないってこと?
 武内を最後に殺しちゃうから、結局祖母は武内に殺されたのか、まどかの飲んだヤクルトに薬が入っていたのかってことも確実なことは分らない(多分そうだということなのだけれど、武内が寝たきりの祖母を殺す動機って何?雪見を遠ざけようとする動機は説明されているけれど)。この物語において、梶間が武内を殺さなければならない必然性はない。梶間にとって、実刑を受けることなどより、誤審であったことが明らかとなったことの方がずっと重いのだから、それで梶間に対する罰は十分すぎる。武内に語らせないために作者が殺したということなのだろうか。分らないままに余韻を残して、というのとは違う気がするのだけれど。
う〜ん。自分でも何書いてるのか良く分らなくなってきたけど、考えるのもアホらしくなってきた。読み違ってるかもしれないけど、まあもうどっちでもいいや。

火の粉 (幻冬舎文庫)

火の粉 (幻冬舎文庫)