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読書備忘録です。

薔薇窓/帚木蓬生

 1900年頃のパリ万博開催時のパリを舞台としたフランス人精神科医ラセーグと曲技団から売られた日本人娘音奴を主人公とするサスペンス・ロマン。主筋たる連続失踪事件や音奴の巻き込まれた事件のサスペンス/ミステリーとしての筋立ては甘いと言うべきだろうし、主筋と、脇筋というべきラセーグの貴婦人によるストーカー被害の絡み方も有機的でない。タイトルにもなっている薔薇窓ももっと印象的な使われ方があるようにも思う(なんだか取って付けたような感じもしてしまう)。小説の出来としてはもう一つなのだろうと思うのだが、良く出来たB級恋愛小説というのか、こういうのも久しぶりに読んだ感じで、何となくホッとしたような気分で、結構満足。
 帚木の作品は、精神医学、フランス、第二次大戦をモチーフとしたものが多いのだが、「閉鎖病棟」「臓器農場」などの医学もの、「三たびの海峡」「逃亡」などの太平洋戦争を背景としたものなど、フランスを舞台としたもの以外の方に素晴らしいものが多いように思う。これらの作品のどれかで直木賞をとっていておかしくない作家だと思うのだが。

薔薇窓〈上〉 (新潮文庫)

薔薇窓〈上〉 (新潮文庫)