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読書備忘録です。

停電の夜に/ジュンパ・ラヒリ

 インド系アメリカ人によるO・ヘンリー賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ピュリツァー賞などを総なめにした短編集。ピュリツァー賞って小説にも与えられるのか。ジャーナリストの賞だとばかり思っていた。
 いずれの短編も、余韻深く、素晴らしい。原作では、「病気の翻訳」が表題作となっているようだが、私は「停電の夜に」の方が好きだ。「停電の夜に」の原題は「A Temporary Matter」。これを「停電の夜に」というタイトルにしたのはうまい。うまいけれど、「一時的なこと」といった本来の意味が消えて、作者がタイトルに持たせた意図が減殺されてはいないだろうか。翻訳はどんなに上手くても限界がある。(なお、この作品の冒頭に出てくる「臨時の措置」というのはおそらくA Temporary Matterの訳なのだろう。)原文でも読んでみたいと思わせる本だ。

停電の夜に (新潮文庫)

停電の夜に (新潮文庫)