HONMEMO

読書備忘録です。

本格小説/水村美苗

 長編小説の魅力を満喫した。ただ「本格小説」ってタイトルはいただけないし、損だと思う*1
 この小説はブロンテ「嵐が丘」へのオマージュというところがあるらしいのだけれど、私は「嵐が丘」を読んでいないのでよく分らない。ただ、谷崎潤一郎細雪」とか、マーガレット・ミッチェル風と共に去りぬ」とか、北杜夫「楡家の人々」とか、そういった長編小説のもつ香りを楽しむことができる(誉めすぎ?)。金持ち、勝ち組はあっても、貴族的なものが崩壊した現代においては、こういう小説は時代小説のように読まれるしかないのかもしれないと思ったりもする。

本格小説〈上〉 (新潮文庫)

本格小説〈上〉 (新潮文庫)


1560円(上・下)@近くの本屋さん

*1:そもそも本格小説なんて言葉があるのかと思って、調べてみた。大辞泉によると「作者の身辺に題材を取った心境小説や私小説に対して、社会的現実を客観的に描く、作品自体が自立した小説。大正末期に中村武羅夫(なかむらむらお)が提唱。」だそうな。なんだかちょっと違うような気もする。