10年程前に発表された本で、これまでに教育を巡る情勢は大きく変わっているとも言えるけれど、今なお読む価値のある著作であると思う。階層に基づく差別(所得だけでなくて、文化的な格差といってよい)があるにもかかわらず、それを見えなくしたものは何だったか。55年体制の下、文部省と日教組が厳しく対立する中で、子供に差別「感」を与えないことが重要視された教育が行われたことで、何が起こったか(義務教育だけが良い子(?)となってその外で何が起こったか)・・・などなど。著者は教育(の理想)に何を求めるのかではなくて、教育に何ができないのかを考えるべきだと言う。けだし名言というべきと思う。
教育問題は誰でもが一家言を持ち、あーだこーだ言いたくなるものだけれど、自分の周りだけの体験でものを言うのではなくて、いろいろ考える必要があるだろう。
大衆教育社会のゆくえ―学歴主義と平等神話の戦後史 (中公新書)
- 作者: 苅谷剛彦
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1995/06
- メディア: 新書
- 購入: 4人 クリック: 109回
- この商品を含むブログ (68件) を見る
350円@ブックオフ