堤清二と辻井喬という名前が同一人物のものだということを知ったのは、つい最近のことで、氏が「8月15日と南原繁を語る会」の講演者の一人であったことによる。本書は、辻井喬が書いた堤清二の自伝的小説。衆議院議長も務めた西武グループの創業者である父堤康次郎(小説中では孫次郎)という人物がなんとも凄い男で、その父との確執が清二(小説では甫)を共産主義運動へと向かわせる。小説は共産党からの除名、結核療養のところで終わるのだが、その後、氏は、衆議院議長康次郎の秘書を務め、更にはセゾングループを率いることになる・・・。
昭和44年に上梓された本だが、40才を超えてこのような私小説(処女小説でもあるらしい)を書かせる心境というのはどのようなものであったろうか。「父の肖像」もいずれ読みたい。
なお、氏は、実業家堤清二の手慰みとして文芸活動をしているのではなくて、むしろ文人辻井喬の道楽が実業だったらしい。知らなかった。ごく最近も、現代詩の花椿賞を受賞とか。→http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20060915bk03.htm
堤清二 - Wikipedia
- 作者: 辻井喬
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1989/04
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
105円@ブックオフ cf.辻井喬コレクション〈1〉小説 彷徨の季節の中で 他