いわゆる戦後民主主義という言葉が侮蔑をこめて語られることが多くなっている中で、若い世代に向けて戦後民主主義を声高に唱えるところに新鮮さを感じた*1。
かつてアメリカがアメリカの都合で押しつけ、アメリカの都合で放棄せよと迫ってきている日本国憲法の前文や第九条に記された、紛争解決としての手段としての戦争をしない、というルールを君たちの意志で自分たちのルールとして選んでみてはどうか、ということだ。
というところは、加藤典洋の思想に通じるが、では具体的にはどうするかということについて、結局、戦争は嫌だと発言することが重要だと言うにとどまっていて、なんだかヘナヘナと腰砕けの感が否めない。そういうことが言えない状況になっているという認識の中では、言うこと自体の価値もあろうが、よく考えもせず「嫌だ」と発言した途端に、現下の右よりフレーズの氾濫の中で、轟沈してしまうことになりかねないような。
例えばぼくと福田和也のあいだにもある種の「棲み分け」がある。論壇の中で彼は過剰な「保守」としてふるまい、ぼくは過剰な「戦後民主主義者」としてふるまう。そのことで、ぼくはぼくなりに言論全体のバランスをとってきたつもりだ。
というところも、なんだかガクッとくる。
いろいろ書いたが、全体としてはなかなかおもしろく読んだ。
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