終戦後なお混沌としていた時代に、昭電疑獄など数々のスクープをものした読売の異能の花形記者立松和博が、検察の派閥争いなどを背景に売春汚職報道記事を名誉棄損とされて逮捕され、社にも捨てられてぼろぼろになって死ぬまでを描くノンフィクション。
著者は、あとがきで
新聞記者のサラリーマン化がしきりにいわれている今日、第二の立松が出てくるはずがない。万が一、出てきたとしても、組織がかならず排除するであろう。
と書いているが、新聞記者に限らず、そもそも立松和博のような「豪放な」というか、そんな陳腐な言葉では収まらない破天荒な人間は、のんきな現代においてはなかなか生まれないのではないかと思わせるものがある。
そんな「時代」と、立松和博とその周辺を綿密に描いて、ノンフィクションの醍醐味を満喫できる作品だ。
- 作者: 本田靖春
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/03/16
- メディア: 文庫
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