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読書備忘録です。

プールサイド小景・静物/庄野潤三

表題作のほか、「舞踏」「相客」「五人の男」「イタリア風」「蟹」の7短編。「プールサイド小景」は芥川賞受賞作。
巻頭に置かれた「舞踏」の冒頭が鮮烈で、引き込まれてしまった↓。

家庭の危機というものは、台所の天窓にへばりついている守宮のようなものだ。
それは何時からということなしに、そこにいる。その姿は不吉で油断がならない。しかし、それは恰も家屋の内部の調度品の一つであるかの如くそこにいるので、つい人々はその存在に馴れてしまう。それに、誰だっていやなものは見ないでいようとするものだ。

この短編、ラストのダンスシーンも素敵だ。
昭和25年から35年にかけての作品で、男女関係のあり方とかが古臭いのだけれど、解説(山室静)のいう「生活の味」が淡々と味わい深く書かれているものが多い。「蟹」のラスト3行とか、「静物」のエンディング(蓑虫のエピソード)とか、ブンガク研究の題材になりそうな……。

プールサイド小景・静物 (新潮文庫)

プールサイド小景・静物 (新潮文庫)


105円@BO