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読書備忘録です。

紫禁城の黄昏/R.F.ジョンストン

清朝最後の皇帝宣統帝溥儀の家庭教師ジョンストンによる記録。中華民国が成立し、清朝が崩壊した後、1919年頃から溥儀の日本公使館への亡命(1924)頃までの混乱の時代を描く。
貴重な第一次史料と言っていいと思うけれども、一方で、著者は、溥儀に入れ込んでいて客観的に書こうとしていないように見られ、また感情豊かでw、あまりにも対象に接近し過ぎているが故に重要なことと瑣末なことの区別がついていないようにも思えて、研究材料として読むならともかく、ノンフィクション的に読みたい私には、読みづらいし、ポイントが捉えにくい。
本書は、本文25章中の1から10章及び16章を削除した抄訳、部分訳である。こんなに大胆に省略するなら、本のタイトルに「抄訳」って入れとけよ。凡例とかあとがきを読まなくてはそれが分らないってのは詐欺だ*1。しかも削除した部分は「主観的な色彩の強い前史的部分」だというのだが、「主観的色彩の強い」ってのは何だ?渡部昇一センセじゃなくても呆れるわな。あまり面白くないし、この本が極東軍事裁判に証拠採用されていたらどうこうなんてな議論もあまりにナイーヴなもののように思われるので、今更センセ監修の完訳本(asin:4396650329)を読む気は全くしない。

紫禁城の黄昏 (岩波文庫)

紫禁城の黄昏 (岩波文庫)


105円@BO

*1:105円で買ったものだからまあいいけど。