乙川優三郎を読んだ余韻から、積読山の中から引き出して。
計11編の短編集。この本は、本当にタイトルで損をしていると思う。「女だけが不当な犠牲を払っている」という批判を浴びたのに対して、周五郎はそんなことは全くないと反論、実際そうなのだろうと思うが、女だけが犠牲を払っているのではないにせよ、「婦道記」というタイトルだけですでに現代の読者からすると「何言っちゃってんの!」というところがあるのは否めないのではないだろうか。筆者はそうあるべきだという教訓じみた話にはしていないにせよ、そのような「婦道」にカチンときてしまう人には読めない小説かもしれない。
しかし、一方、本書が今でも読み継がれているのは、拝金主義と対極にあるつましい暮らしの中にささやかな幸せを見出すような、表に出ない心遣いに価値を見出すような、「けなげな」、「いじらしい」、あるいは時に「凛とした」女性たちに心動かされる読者(もちろん私もだ)が多いからだろうと思う。
- 作者: 山本周五郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1958/10/28
- メディア: 文庫
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