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読書備忘録です。

こんな夜更けにバナナかよ/渡辺一史

筋ジストロフィー患者鹿野靖明と氏を支えたボランティアたちの現場を取材したノンフィクション。大宅壮一ノンフィクション賞講談社ノンフィクション賞受賞。
鹿野氏とボランティアの関係は、ワガママな寅さんと“とらや”の面々にも譬えられており、そういう「登場人物」それぞれの個性の面白さといったところもあるのだが、本書に引き込まれてしまうのは、著者自身も登場人物となって、介助問題あるいは人間と人間との関係の問題について、深く真摯に考察しているところにある。
まとめに当たる第7章のタイトルは、「夜明け前の介助」であり、扉には、ボランティア斉藤氏の言葉が掲げられている。

「僕はボランティアっていうのは、鹿野さんの生活において、たいした存在にならなければならないだけ、よいのではと思うようになりました。たいした存在じゃないというのは、日常というか、普通のものというか、そういうもの。ちょっと理想っぽいけど、そう思います。」

著者のまとめは、次のようである。

ノーマライゼーション」という言葉があるが、この語の根幹を成す「ノーマル=普通」の意味を、じつは誰も正確には語れない。
障害者の生活を「フツウ」にするというが、かたや健常者にとっては、今や「フツウに生きること」の価値が揺らぎ、その意味が見失われている時代でもある。…(略)
そして、フツウの介助―いつも誰もがそれを「特別なこと」としてでなく、フツウにできる時代が来るのだとしたら、今はまだ、夜明け前ということなのかもしれない。

こんな夜更けにバナナかよ

こんな夜更けにバナナかよ


950円@BO