ユダヤ人の神は「救いのために顕現する」ものではなく、「すべての責任*1を一身に引き受けるような人間の全き成熟を求める」ものである…。勧善懲悪の全能神はまさにその全能性ゆえに人間の邪悪さを免責する。一方、不在の神、遠き神は、人間の理解も共感も絶した遠い境位に踏みとどまるがゆえに、人間の成熟を促さざるを得ない。
そんな神をもつユダヤ人だから、迫害され、ノーベル賞を多数出すように知性的であるのだと。
ユダヤ人問題には、「最終的解決」は存在しない。…いかなる政治学的・社会学的提言をもってしてもユダヤ人問題の最終的解決に私たちは至り着くことができない。これが私の立場である。
私にできる誠実な態度は、「これは解決が困難な問題である」というタグを付けて、「デスクトップ」に置いて「目障り」なままにしておくことである。それに「解決不能問題」というラベルを貼って「ファイル」してはならない。
…なるほど。
小林秀雄賞受賞
- 作者: 内田樹
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*1:受難