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読書備忘録です。

心にナイフをしのばせて/奥野修司

被害者は高校1年生。加害者は、同級生。被害者の家族は、その死がトラウマとなって長く悲惨な生活を送る一方、加害者は、少年法に守られて、弁護士となるも、被害者に謝罪もせず、補償金も払わない。弁護士ってのがアイロニックで、小説よりも奇なり。
被害者の家族の「加害者を恨むこともできないほどの悲惨」が丁寧に描かれる一方で、加害者のその後は、「加害者の人権尊重」のためもあって、ほんのわずかなページが割かれているにすぎず、加害者側のその後の心理が書かれていないのが(仕方がないけれど)残念だ*1。犯罪被害者のケアを訴え、「更生」とは何かを問う*2という目的のためには、これで十分説得力はあるけれど。

心にナイフをしのばせて

心にナイフをしのばせて


850円@BO

*1:むしろ、のうのうと名士として生きている加害者の心理に興味がある。

*2:『「更生」とは被害者家族が加害者を許す気持ちになった時に言える言葉なのだ』