表題作のほか、「懶惰の説」「恋愛及び色情」「客ぎらい」「旅のいろいろ」「厠のいろいろ」。日本(人、文化)を考えるための10冊なんて企画を立てたら確実にノミネートされるべき1冊だろう。
…私が何よりも感心するのは、あの玉虫色に光る青い口紅である。…あの紅こそはほのぐらい蝋燭のはためきを想像しなければ、その魅力を解し得ない。古人は女の紅い唇をわざと青黒く塗りつぶして、それに螺鈿を鏤めたのだ。…私は、蘭燈のゆらめく蔭で若い女があの鬼火のような青い唇の間からときどき黒漆色の歯を光らせてほほ笑んでいるさまを思うと、それ以上の白い顔を考えることが出来ない。…ここで私は、そういう顔の白さを想う半面に、それを取り囲む闇の色について話したい…
- 作者: 谷崎潤一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1995/09/18
- メディア: 文庫
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