HONMEMO

読書備忘録です。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ/加藤陽子

近所の本屋さんで部門別売上ランキング1位だったか2位だったかになっていたこともあって、手にとりました。
日清戦争から太平洋戦争までの日本近現代史についての栄光学園の生徒への5日間の講義をまとめたものです。あとがきにありますが、この講義が実現したのは、2002年に氏が中央公論に寄稿した『わたしが書きたい「理想の教科書」』がきっかけになっているようです。本書は教科書ではありませんが、氏の夢の一端が実現したといっていいのではないでしょうか。
数多くの気づきの得られた本ですが、その一部をメモしておきます。

  • 社会民主主義的改革要求に既存政治システムが応えられないことで、軍部に期待が集まった。では、現在の政治システムの機能不全とは、
    • 小選挙区制下においては、国民の支持を失ったときに解散総選挙を行わないという傾向にあること
    • 小選挙区制下にあっては、投票に熱意を持ち、かつ多数を占める世代の意見が突出して尊重されうること
  • 日中戦争を当時「報償」「討匪戦」とみていたことと、9.11後の米国の戦争の見方との類似性
  • 日本国憲法が「人民の人民による人民のための政治」を内包すること
  • 巨大な数の人が死んだ後には、新たな社会契約、憲法が必要になる。
  • 戦争は、相手国の憲法を書き換えるもの
  • 山県が統帥権独立という考え方を作ったのは、西郷隆盛を作ってはいけないという教訓によるのではないか。
  • 歴史の誤用 中国喪失のトラウマ→ベトナムの泥沼化
  • 胡適と汪兆銘の論争 日本切腹、中国介錯論か日本との妥協による赤化防止か
  • 水野廣徳「持久戦では日本は勝てない→日本は戦争をする資格がない」という議論は真剣に受け入れられない。地政学的にソ連を挟撃するか、いかに先制攻撃を行うかという議論になる。
  • 太平洋戦争が「被害者」の諸相として語られるのは、
    • どこでいつ死んだかわからぬ多くの戦死者の慰霊の問題
    • ソ連侵攻に対する憎悪感情

(追記)出版社による書評リスト。そのうち、想定内ですけれどやはり共感したのは、内田樹、ハッとしたのは小飼弾の書評です。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ


1785円@近所の本屋さん