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読書備忘録です。

回送電車/堀江敏幸

様々な媒体に発表された小文を集めた散文集です。回送電車は、堀江敏幸の文学の理想であると。

特急でも準急でも各駅でもない幻の電車。そんな回送電車の位置取りは、じつは私が漠然と夢見ている文学の理想としての《居候》的な身分にほど近い。評論や小説やエッセイ等の諸領域を横断する三分の呼吸、複数のジャンルのなかを単独で生き抜くなどという傲慢な態度からははるかに遠く、それぞれに定められた役割のあいだを縫って、なんとなく余裕のありそうなそぶりを見せるこの間の抜けたダンディズムこそ《居候》の本質であり、回送電車の特質なのだ。(「回送電車主義宣言」)

回送電車 (中公文庫)

回送電車 (中公文庫)