原題は、「なぜ善き人々に悪いことが起こるのか」というものです。ユダヤ教のラビである著者は、息子を「早老症」で若くして亡くすという辛い体験を通じて、「なぜ何も悪いことをしていない人に、神は酷い苦しみを与えるのか」あるいは「神はなぜホロコーストを回避するために干渉しないのか」という問いに向き合います。
著者は、それは、神は全知全能ではないからである。確かに正しい人に悪いことが起こるが、それは神の意志によるものではないのだと説きます。そう了解することによって、「裁きや赦し、報いや処罰ではなく力と慰めを求めて神に向かう」前向きな生き方ができることになると。
「なぜ善き人々に悪いことが起こるのか」という問いは、ユダヤ教やキリスト教などの信者であるかどうかで、その受け取り方がかなり違うかもしれないとは思いますが、不幸に見舞われた人に対してどう振る舞うのがよいのか、という点も含めて示唆に富む本です。
- 作者: H.S.クシュナー,Harold S. Kushner,斎藤武
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/03/14
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 92回
- この商品を含むブログ (34件) を見る