著者は芸大卒、本書で日本推理作家協会賞を受賞している。著名な「寝室」の「スケッチ」が贋作であることを、またその贋作者がだれかを推理していくところが受賞の理由なのだろう。
「寝室」と贋作と指摘される「スケッチ」との対比で、いかにゴッホの「寝室」の構図がよく計算された、すばらしいものであるかという技術的な指摘は素人の私にはとても新鮮で、目からうろこだった。そういう意味で第4章までで十分であり、「スケッチ」が悪意ある贋作であるかどうか、ゴッホを死に至らしめたのはだれかといった、それ以降のヨーを中心とする物語は、著者の強い思い入れについていけず、読んでいてげんなりする。
- 作者: 小林英樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/10/24
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (5件) を見る