文庫本で1200ページを超えるということだけでなくて、様々な文学的形式を持ちこみ、地理的にはアメリカ、フランスにまで、時間的にも近代日本というだけでない広がりを持つ大作であり、また、作者津島祐子の一族をモチーフとしていること、女性、生と死といったテーマの掘り下げ方などからみて、作者津島祐子にとっては、本書を世に出せればいつ死んでもいいというような重要な作品なのではないかと思う。こういう柄の大きな作品は何年かに一作しか出ないのでは?
解説の中上紀も引いているところだけれど、本書1200ページは、次の一文に凝集するのかもしれない。
つぎつぎに人は死んでいく。でも、その死を全身でのみこむように、つぎつぎに赤んぼが生まれ、そだっていく。女たちは死の悲しみに泣きながら、赤んぼの体にうっとりみとれ、いつしか悲しみをわすれていく。なんて単純なそしてせつない喜び!
NHK朝の連ドラ「純情きらり」の原案。ドラマは本書のごく一部を切り取って再構成しているのだけれど、宮崎あおいの桜子、寺島しのぶの笛子、西島秀俊の冬吾、井川遥の杏子など、ピッタリのキャストだったという感じ(先にドラマをみているので、先入観もあるのだろうけれど)。
- 作者: 津島佑子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/01/13
- メディア: 文庫
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