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読書備忘録です。

社会を変えるには/小熊英二

原発官邸前デモなどにも参加している著者。デモに何の意味があるのか?デモより投票に行くべきではないか?と問われるという。私もデモに対しては懐疑的だ(だった)。本書は、デモだけでなく、ロビー活動や国民投票なども含めて、直接民主制的な参加の要素の現代的意義を説く。
社会の変化によって、代議制民主主義が機能不全を起こしている、制度的な政治システムにおける意思決定において「われわれ」を代表できなくなっている(していると感じられなくなっている)、だから、デモへの参加などを通じて、政策決定に関与する(しているという意識をもてる)ことは有意義なことだ。(そうでないと僭主を産む。)
なるほどと思う。一方で、エンパワーメントの重要性がいわれるが、ピクニックのように楽しくデモに参加する大衆が、例えば原発の問題のような複雑な問題をどこまで真剣に理解しようとするのか?というのもあり、このような参加の形態が僭主誕生の温床となるということにならないだろうかなどとも思う。
社会思想や運動の歴史など、わかりやすく書かれていて、私のようなものには大変勉強になった。教養課程の学生さんにおすすめ。

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)