主人公静人は、死者を「悼む人」(悼むというのは、死者が愛し、愛されたこと、感謝されたことをいつまでも忘れないこと)なのだが、彼が悼む人は、家族とか本人と何らかの関係のあった人に限らない。「死者」の方からみると、全く関係のない知らない人に悼まれて、どういう意味があるのだろうか。私は死んで見も知らぬ静人に悼まれても(いつまでも憶えていてもらっても)全く嬉しくない。だから、皆静人を胡散臭く見るし、静人自身、自らの「悼む」行為を「自己満足」と言うのだし、「病気」としか説明できない。
そういう根本のところが引っかかるので、蒔野、奈義が静人に共感していくことにも違和感を感じるなど、ストーリーにのめりこめない。
一方、静人の放浪の話以外の物語は、蒔野、奈義、静人の「家族」の死をめぐる物語で、これはとっても濃い。涙が出る。
直木賞受賞
- 作者: 天童荒太
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/05/10
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