枕木探偵事務所に、熊埜御堂さんが依頼人として現われ、助手の郷子さんを交えて、雷雨に降り込められた中、延々と、いったりきたりしながら話をする。枕木さんの話し方が「スイッチバック」みたいだと言うのは郷子さんだが、この物語自体もそんな感じ。
この切り替え時のわずかな「あそび」が肝なんでしょうね。
なんて言葉もあって、回送電車主義宣言をする堀江敏幸自身、スイッチバックを好ましく思っているのだろう。
熊埜御堂さんの依頼の話に、枕木さんの過去の経験話が重なり、さらには雷雨の中で行方を心配しているホームレスの話や郷子さんのクリーニング屋での「事件」の話なども絡まって協奏曲を聞くよう。ほとんど会話だけで成り立っているのに、「」を使わないでつないでいく斬新な書き方も効果的だ。
探偵事務所での依頼の話だが、ミステリーではない。ただ、依頼にはちょっとしたナゾがあり、これを解く、というよりは発見したのは、郷子さんだった。
ロバート・キャンベルの書評
- 作者: 堀江敏幸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/05/24
- メディア: 単行本
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