医学、薬学研究が中心だが、これにとどまらず、広く人体実験、自己実験の事例を取材したもの。
コレラ菌に汚染されている可能性の高い水や、黄熱病患者のゲロ、寄生虫、プルトニウムを飲むとか、時におぞましい内容を含むのだが、ユーモア、ウィットに富む筆致がなかなかいい。
時代が違うとはいえ、貧者や孤児までもを対象として危険な人体実験が行われてきたことは、ナチスや731部隊の人体実験のおぞましさと変わらない。一方で、自分を対象とした実験が科学の発展、福利向上に大きく寄与してきた。あとがきのタイトルにあるように「究極の自己犠牲精神をもった科学者たちに感謝」。今は倫理原則「ヘルシンキ宣言」で自己実験でも一定の規制があるようだ(中野徹の解説)。
- 作者: トレヴァー・ノートン,赤根洋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/07/06
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