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読書備忘録です。

あの日からの建築/伊藤豊雄

 「みんなの家」でヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞したということで、著者のことを知って、いつだったか、乃木坂にみんなの家のプロジェクトの展示を見に行った。
 建築家は、自治体や住民と対峙することが多く、震災復興の過程でも建築家が呼ばれることはあまりなかったという。そんな中で、著者は、震災を契機として、社会との関係を取り戻そうとして、住民の声を聴き、みんなの家プロジェクトを立ち上げる。
 著者の建築に対する考え方を振り返ったのち、今、震災を経て、氏は、二十世紀の芸術が①個人の独創性を最も重要な価値に据えたこと、②抽象という言葉の下で、自然から切り離した地点でモノを考える方法を重視したことを徹底的に問い直す必要があるという。

そもそも建築の原初的姿は、共同で何かを作り上げ、それを集団として崇め、またつくることが喜びでもあるという共同性の表れだったのだ。

あの日からの建築 (集英社新書)

あの日からの建築 (集英社新書)