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読書備忘録です。

田中清玄自伝/田中清玄・大須賀瑞夫

 戦前東京帝大を出て、武装共産党の書記長も務め*1、獄中転向後は、天皇主義者・右翼大物として、石油取引や鄧小平とのパイプなどを通じた日中関係などさまざまな政治的・経済的な場面で暗躍した人のようだ。
 天皇中心主義のほか、米国依存からの脱却、アジア主義を基本思想とする一方、右翼と言っても岸信介・児玉誉士夫を蛇蝎のごとく嫌うなど、一般に右翼といわれる見方を超えた凄みを感じさせる人物だ。といって、ハイエク氏のノーベル賞受賞祝賀会でメインテーブルに座ろうが、鄧小平やUAE首長やオットー大公と親交が深ろうが、山口組3代目組長と深い関係を持つなど、やはり裏社会の人物であり、インタビューをまとめた本書で、「何が語られていないのか」がとても気になる。
 しかし、こういう人物は今やなかなかいないだろうし、求められもしないのかもしれない。

田中清玄自伝 (ちくま文庫)

田中清玄自伝 (ちくま文庫)

*1:福本イズムに反対、野坂参三をけなしたりしている。