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読書備忘録です。

ジャーナリズムの思想/原寿雄

共同通信の社会部記者から社長を務めた著者がジャーナリズムはどうあるべきかをまとめたもの。

  • ジャーナリズムの不偏不党とは何か。欧米では、インディペンデントを掲げる有力紙が、選挙で特定政党を支持するのは社会的認知を受けているが、日本の新聞がそれをしたら社会問題になる。日本の新聞の「不偏不党」「中立」は、主体性がなく、『「独立」より受け身で消極的であり、右にも左にも偏らないことばかり気にする中庸の思想である。いつも中道を行こうとするので、現実の潮流が大きく右に傾けば右に、左に傾けば左に、いつもどちらかに傾斜した中道になりやすい。日本の社説が鋭さを欠いて、主張より解説的になりやすいのも、多様な読者を配慮する「不偏不党」の日本的解釈から影響されている』。

 「不偏不党」とは、政治的独立とイデオロギー的独立であり、左右両派いずれにも有用な客観的報道であるべきであると。

  • 「不偏不党」「公平」の原則は、観客民主主義、政治蔑視、一億総評論家作りを助長しているように思える。マスコミが特定政党・候補にコミットしないだけでなく、「不偏不党」に縛られ過ぎて、政党・候補者の公約や実績を具体的に点検し、報道・論評しようとしない消極的な態度が問題が大きな要因となっているのではないか。

 不偏不党が「政党にはコミットしないほうが賢明」、政治蔑視を生み、アパシーを強めているのではないか。
このほか、ナショナリズムとジャーナリズム、匿名報道など人権思想とジャーナリズムなど、様々な論点が取り上げられていて、1997年上梓と15年ほど前のものではあるが、マスコミを考えるうえで一読の価値はある。
2009年に「ジャーナリズムの可能性」というのもやはり岩波新書で出ているのか。これもいずれ。

ジャーナリズムの思想 (岩波新書)

ジャーナリズムの思想 (岩波新書)