HONMEMO

読書備忘録です。

平気でうそをつく人たち/M・スコット・ペック

このタイトルだと、虚言癖の人々のことかと思ってしまうが、それとはちょっとずれていて、本書では、「邪悪性」を精神病の一形態として規定できないか、科学的研究の対象とできないか、という考察が中心になっているので、むしろ副題の「虚偽と邪悪の心理学」の方が内容に沿っている(原題はPeople of the lie)。
ここで「邪悪性とは、自分自身の病める統合性を防衛し保持するために、他人の精神的成長を破壊する力を振るうこと、と定義することができる。簡単に言えば、これは他人をスケープゴートにすることである。」とされ、自己愛的(ナルシシズム的)人格障害の一つの変種として分類されるのが適当とされる。
こういう人たちはそもそも病の意識がなく、治療を求めないことが多いことなどもあって、とんでもなくはた迷惑なのだけれど、対処のしようが難しいようだ(福田ますみ著「でっちあげ」がとりあげたモンスター・ペアレンツなんかを想起させる。)。
また、集団の悪として、ソンミ虐殺を引き起こした軍の病理も取り上げられ、興味深い。
「邪悪性」ということをまず規定して、そこから論を立てていくのが適当なのか、という疑問がまとわりついて離れないのだが、これは私がキリスト者でないからかな。
原書は1983年上梓のロングセラー。

文庫 平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学 (草思社文庫)

文庫 平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学 (草思社文庫)