2009年、著者が亡くなる直前に書かれたエッセイで、あとがきを書く前に亡くなったようだ。メッセージ性の高い文章になっている。
人間は真実を追究する存在だといわれるが、むしろ真実でないこと、つまりある種のまぼろしを真実だと思い込む存在だというほうがあたっているのではないか。
…
真理があると思っているよりは、みなイリュージョンなのだと思い、そのつもりで世界を眺めてごらんなさい。
世界とは、案外、どうにでもなるものだ。人間には論理を組み立てる能力がかなりあるから、筋が通ると、これは真理だと、思えば思えてしまう。
人間といういきものは、そういうあやしげなものだと考え、それですませてしまうこと、それがぼくのいういいかげんさだ。
どんなものの見方も相対化して考えてごらんなさい。科学もそのうちのひとつの見方として。
自分の精神のよって立つところに、いっさい、これは絶対というところはないと思うと不安になるが、その不安の中で、もがきながら耐えることが、これから生きていくことになるのではないかと僕は思う。
人間は自然を破壊するものだ。そうはっきり認識しておくほうが、よっぽど自然を守ることにつながる。守っているといいながら破壊している人間がたくさんいるのだから。
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