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HONMEMO

読書備忘録です。

科学者が人間であること/中村桂子

 筆者は、我が国生命科学の第一人者、JT生命誌研究館館長。
 「人間は生きものであり、自然の中にある。」という認識を共有することによって、近代文明を見直し、新しい社会づくりを進めようとする提言。
 こういう考え方って、広く表層的な共感は得られるのだが、社会に通底する理念、世界観となって、社会が変わるというところまでいくのは、なかなか容易ではないだろう。
 いくつかメモ。

  • 科学を知った上で、機械だけに頼らず生きものとしての自分の感覚をも活用するのが「人間は生きものである」ことを基本に置く生き方。これは自律的な生き方をしようという提言でもある。
  • 生きものの基本は多様性→分散型国土
  • 金融資本主義→生活者の暮らしという現実から遊離、科学・科学技術のあり方も歪められている。
  • 専門家(科学者)たちが、自らもまた社会の中に生きる生活者であるという感覚を失い、閉じられた集団の価値観だけを指針に行動しているという問題(原子力ムラ)。現在の科学、科学者のありようをそのままにしてコミュニケーターという役割を作っても意味がない。
  • 科学には世界観が不可欠であり、それは本来自然や日常生活と結びついているはずのものだが、それと無関係に単に便利な社会を作るための知識とされている。科学、科学者が変わることがまず必要。
  • 科学は、自然を死物(色も匂いもない、形と運動だけがある物質)化する。科学そのものを放棄せずに、それを活きた自然との一体感へつなげる方法として、日常・略画的世界と科学・蜜画的世界の重ね書きという方法がある。
  • 日本の理科教育は、重ね書きのできる人を育てるものになっている。小学校農業科はよい試み。