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読書備忘録です。

不愉快な現実/孫崎亨

  1. 中国は経済・軍事両面で米国と肩を並べる大国になる。
  2. 米国は、中国を最も重要な国と位置づける。
  3. 日本は軍事的に中国に対抗し得ない。
  4. 米国が日本を守るために中国と軍事的に対決することはない。

という現状認識の下で、紛争を防止、解決し、安全を確保していくために、EUやASEANに倣った複合的相互依存の関係を東アジアに構築する必要性を説く(東アジア共同体構想)。ただし、米国が反対している中でその実現は困難であるから、当面、個別に実質的な複合的相互依存関係を積み上げていくことが重要であるとする。
 領土問題については、ゼロサムでなく、より広い視点を持ち込み、非ゼロサムのウィンウィンの関係を目指すことが重要であり、ドイツをはじめ、領土問題より関係改善を重視した例は山ほどある。*1

 「勝利」という概念は、敵対する者との関係ではなく、自分自身がもつ価値体系との関係で意味を持つ。このような「勝利」は、交渉や相互譲歩、さらにお互いに不利益になる行動を回避することによって実現できる。(トーマス・シェリング)

 「自身への関心」が高く、「他者への関心」が低い場合、「競争(対立)」に向かう傾向を示している。
 だからこそ他者への関心を持つことが、実は問題解決につながるのである。

不愉快な現実  中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書)

不愉快な現実 中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書)

*1:ドイツは、旧プロイセン領もアルザス、ロレーヌも領土の主張をしていない。