HONMEMO

読書備忘録です。

ふたつのオリンピック/ロバート・ホワイティング

ライター&ジャーナリストの名刺を持つ著者が、1962年、米軍諜報部員として来日して以来、今日に至るまでの自伝的ノンフィクション。

タイトルはいわば象徴的なもので、オリンピックに重点はなく、半世紀以上にわたる日米の政治・社会、裏社会、スポーツ、ジャーナリズムなどについて、自らの体験や綿密なインタビューに基づいて綴るもの。秀逸な日米比較文化社会論でもあり、東京の社会史にもなっている。

日米比較の視点そのものも面白いのだが、野球やプロレスあるいは保守政治と裏社会・CIAとの関係など、突っ込んだ取材により、人物、エピソードがヴィヴィッドに描かれていていて飽きさせない。

特に興味深かったのは、著者の米軍勤務時代。

U2が日本に墜落していたとか、

キューバ危機に際して、沖縄に核が配備されていたから、沖縄ひいては東京への核報復を真剣に心配したとか、

北朝鮮からのヘロイン密輸にまつわるキャノン機関の謀略だとか、

マルクス主義の学生をギャフンと言わせたロバート・ケネディ司法長官の礼儀正しい振る舞いとか。