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読書備忘録です。

リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください/井上達夫

-リベラリズムは、寛容と啓蒙の2つの流れから生まれたが、そのそれぞれのポジを統合させる規範的理念が正義。正義がリベラリズムの核心。

-どの正義構想も持つべき正義概念の規範的実質は、「普遍化不可能な差別の排除」にある。これは、反転可能性テストによって検証される。=自分の他者に対する行動や要求が、自分の視点だけでなく、他者の視点からも拒絶できないような理由によって正当化できるか。→フリーライド、ダブルスタンダードの禁止。

-アジア女性基金で、見舞金と謝罪(総理による謝罪レター)。これは、国際的にみても稀なことで、誇るべきこと。(アメリカは自国が侵略した国に謝罪することはない。)これを批判するから、リベラル嫌いが増える。保守側も女性基金を自虐的と批判するのでなく、誇るべきもの。戦争犯罪を認めた上で、米英の戦争責任を裁き返すべき。これが二重基準を許さない、正義の要請。

-ドイツは、戦争責任を二重に限定している。ドイツ国民ではなく「ナチ」による、侵略戦争の相手国民でなく「ユダヤ人」に対する責任に限定している。(ゲットーに行って謝罪してもポーランド人の慰霊碑には行かない、国防軍の戦争責任を問う展示会に世論の総攻撃)

-戦争の正義4タイプ

1積極的正戦論 悪しき体制打倒のためといった理由で戦争をしてもいい。

2 無差別戦争観 国益追求のための戦争を認めるが、民間人の無差別攻撃や中立国を攻撃してはいけないといったルールに服する。

3 絶対平和主義 自衛のためでも戦争は認めず、非暴力で抵抗すべき。

4 消極的正戦論 自衛のため必要不可欠な場合にのみ戦争に訴える。

9条は、文理上、絶対平和主義。字句どおりに自衛隊違憲とする原理主義護憲派専守防衛の範囲なら自衛隊、安保は合憲という修正主義的護憲派がある。

自衛隊合憲はすでに解釈改憲なので、修正主義的護憲派に安倍政権の集団的自衛権に係る解釈改憲改憲を批判する資格はない。一方、原理主義護憲派は、自衛隊、安保の現実を事実上容認して、9条を守れと言うだけで自衛隊を破棄しろと言わない。しかも、自衛隊、安保が提供してくれている防衛的利益を享受しながらその正当性を認めない。これは許されない欺瞞。

-我ら愚者の民主主義 愚民政治を批判するエリートも愚かさから免れないからこその民主主義。自分の失敗から学ぶことができる政治が民主主義。

-象徴天皇制は民主主義と矛盾しない。一方、天皇は、国民が皇族を奴隷化しており、民主的奴隷制だから廃止すべき。

 

第2部は正義論がさらに展開される。