土左日記ー堀江敏幸
池澤夏樹監修の日本文学全集で古典の現代語訳を担当した人が行った「連続古典講義」をまとめたものの第2巻。
翻訳というのは、単に言葉を置き換えることではないということがよく分かる。どの人もどのように翻訳するかという方針をきちんと考えて臨んでいる。
堀江敏幸は、貫之が土「左」日記としたのは、土佐という実際の場所と切り離したフィクションとして書いた徴だとし、なぜそうしたのかという心の内面が見えないと現代語訳に手がつけられないという。そして、「男も書く」でよいところを「おとこもすなる」としたのは、「をんなもしてみむ」との関係で「男文字」と「女文字」の対比を仕込んだものということに気づくことから、解釈の方針を決めていく。なんとまあ。