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読書備忘録です。

人外/松岡寿輝

川の光」(未読)は、ネズミが旅するアニメにもなった恐らくは分かりやすいお話なのだろうが、こちらは、猫だかアナグマだかカワウソだかという形をもつ人でなし、人外が、わたしたちのひとりであるかれを探して旅をする、幻想的物語。「名誉と恍惚」とは異なる比較的初期の短編の雰囲気がある。

旅は、川を遡りつつ廃墟を巡るのだが、そこで出会うのは、見張る対象のない見張り番、眼帯をした女タクシー運転手、偽哲学者、廃墟カジノのクルピエ、廃墟図書館の司書とチンパンジー、フォックストロットを踊る廃墟病院の院長、廃墟遊園地のゴンドラ漕ぎ(プログラム)と猫を探す女の子など。

そして疲れ果て旅も終わりというとき、人外は、かれが自分の中にいることにいることを知り、不在=かれであったものがわたしに同化することで、わたしは揮発する。

深読み読書会で取り上げると、収拾がつかなくなりそうな。

 

人外

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