主人公緒方は、基本的に真面目、真っ当な人間なのだが、不当な解雇や配偶者の裏切りなど次々に不条理に見舞われ、ついには強盗の片棒を担いで刑務所へ。出所してのちも不運は続き、衝撃のラストへ。
最後「俺の最初の躓きは何だったのか」と、来し方を振り返る緒方は、これまでは訳もわからず否応なく生きさせられていたが、これからは、死刑になるという現実であっても、それに逆らわず生きていける、ようやく何かから自由になったのではないか、と考える。
「おれはおれの人生に別の意味合いをみつけた上で、縛り首になるんや。」
文庫化されている。