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読書備忘録です。

女帝小池百合子/石井妙子

石井妙子は、おそめ、日本の血脈の2冊を読んだことがあって、その丁寧な取材と文体を好感していたので、ジャーナリスティックな糾弾ものとは異なるだろうと思って手に取ったが、対象が対象だけに(?)やや情緒的な感じではある。

カイロ大学卒業という学歴詐称問題は、本書では卒業証書などに疑義があるとしているが、はっきりしない。それが本物であれば、アラビア語の語学力が中1程度であったとしても形式的には詐称の問題にはならない。しかし、仮に証書が本物であったとしても、首席卒業と言ってみたり、その見せ方の膨らませ方、売り方は呆れるばかり。その後も小池百合子は自らの経歴、経験を語ることを売り物にしてのし上がっていくが、その物語には嘘や誇大なものが多々含まれている。

また、権力、地位に擦り寄り(じじ殺しだそうだ。)、これが役に立たないとなるとさっさと足蹴にして次の権力につこうとする(権力、地位自体が目的で、政治信条などはない)。自分より下のものには極めて冷淡で、人を(出世の)人脈としてしか捉えないことから友人もいない。

まあ、そんな具合に描かれ、こんな特異な人格があるのかと思いつつも、さもありなんと納得する。

こういう人格を持ち上げ、喝采のうちに権力に据える状況が続いていることはそら恐ろしいことだ。小池百合子の場合は、見せ方、ファッションにこだわりがあっても、特異な政治信条がないのがまだ救いなのかもしれない。

 

女帝 小池百合子 (文春e-book)

女帝 小池百合子 (文春e-book)