エッセイ集。滝を見なかったナイアガラフォールズ、車の故障でやむなく泊まったアリゾナの町タクナ、その他通り過ぎただけといったような町、有名な観光地の人々の生活の場所などの思い出。
ピトレスクないわゆる観光地が、「記憶の底にいつまでも沈澱して残っていくことが案外ないのは、…自分の魂と身体だけを透して体験したーすなわちわたし自身にしか可能でないようなやりかたで体験した出会いでないからだろう。」それは結局ガイドブックの記述を確認しただけの体験であり、わざわざその地に行く旅という行為の必要性、必然性も怪しくなる。変哲もない一日でさえ、実は奇跡のような何かではないか、変哲もない一日こそをいつくしむ、と。